ジャンル | ビジュアルノベル |
メーカー/ブランド | ANIPLEX.EXE |
発売年 | 2020 |
ハード | Win(Steam/DLSite etc...) |
お気に入り度(0~10) | 9+ |
プレイ状況 | Trueエンディング回収/Steam版 |
ATRI -My Dear Moments-
— SPD (@SPD_9X2) 2021年1月16日
海面が上昇し多くの陸地が失われた世界での足を失った青年とロボットの少女の一月程の話を描いたノベルゲーム
短めで低価格ですが、丁寧に物語が進み、最後にはあぁ良かったな…と思える完成度の高さで、むしろその分多くの人に遊んでもらいたいと思える傑作だと思いました pic.twitter.com/3jLjHi50C0
この作品はSteamのセールでついでに買うか~的なノリで買ったのですが、当初思っていたより遥かに素晴らしい作品でした。短めのノベルゲームは小さくまとまっていていまいちインパクトに欠ける…という私の偏見を完全に吹き飛ばしてくれた作品です。
ネタバレに配慮して書いていこうと思います。
ATRI -My Dear Moments- とは?
ANIPLEXが自社ブランド ANIPLEX.EXEの第1作目として2020年に「徒花異譚」と同時に発売した全年齢のビジュアルノベルです。開発には Frontwingと枕が関わっており、高品質なノベルゲームになっています。
Steam,DLsite,DMM等各種PCゲームサイトで購入できるほか、2021年12月にはSwitch版とiOS/Android版も発売されるようです。
サウンドトラックにおまけでゲームディスクが付属している物が販売されているので、そちらを購入すれば実質ゲームを買ったことになり、とてもおすすめです(欲しい…)
STORY
原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。
幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩夏生(いかるが なつき)は、
都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。身よりのない彼に遺されたのは、
海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、そして借金。夏生は“失った未来”を取り戻すため、謎の借金取り・キャサリンと共に、
祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。そこで見つけたのは、
棺のような装置の中で眠る不思議な少女――アトリ。彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。
海底からサルベージされたアトリは言う。「マスターが残した最後の命令を果たしたいんです。
それまで、わたしが夏生さんの足になります!」海に沈みゆく穏やかな町で、
少年とロボットの少女の、忘れられない夏が始まる――。
――Steam ストアページより引用
概要
舞台は海面が上昇し、都市の大部分が海に沈んでしまった世界。
片足を失った少年「斑鳩夏生」が謎の借金取りの女性「キャサリン」の言われるままに、沈んだ町から祖母の遺産を引き上げるところから物語は始まります。海中に沈んでいた遺産は人間そっくりの見た目をしたロボットの「アトリ」でした。キャサリンは早くアトリを売って借金を返せと言ってきますが……
選択肢あり、ルート無し、バッドエンドありのシンプルなシステムとなっています。エンディング後にタイトル画面からTrueを選択できるようになり、それを読むことで本当に物語が終わる、という構成を取っています。
システムは、ノベルゲームに必要なものは全て揃っていると言っても過言ではない充実ぶりです。UIの触り心地も良く、流石有名どころが作っているだけのことはあるといったところでしょうか。
プレイ時間は、7時間程度で短めとなっていますが、その分価格も安く手に入ります。
良かった点
- 最高のシナリオ
シナリオは中盤まではアトリとの出会いによって変化する日常を描き、終盤で一気に加速し怒涛の展開が待っています。テンポよく様々なシーンを詰め込んでいるので、中だるみすることなく一気に読み進めることができ、そして短い作品とは思えない圧倒的な充実感を生み出してくれます。
終盤に近付くにつれて胸が締め付けられるように痛み、そしてラストには主人公たちの下した悲しいけれど前向きな決断に涙腺をやられました。エンディングの流れるタイミング、そしてエンディングの曲が卑怯すぎて、こんなの感動しない人いないだろ……って感じでした。
- 寂しいのに優しい世界観
作中世界は海面上昇により文明が後退し、荒廃しています。しかし、人々は強く生き、優しい心と前向きな気持ちは失っていない。
そんな寂しさと温かさの共存した世界観は居心地が良く、新鮮でもあり、本作の大きな魅力の一つとなっています。
- キャラクター描写
ヒロインのアトリが可愛い!!というのはよく言われていますが、本作はそれだけでなく、主人公の夏生やサブキャラにもとても良いキャラ付けがされています。正直もっとシナリオの尺を伸ばして各キャラを深堀りしてほしかったと思うくらいです。作中キャラの生み出す優しく楽しく、そして前向きな空気感は素晴らしいの一言です。
- 美麗なグラフィック・高品質の音楽
グラフィックは、立ち絵・背景・CGどれも非常にきれいです。特に背景にはかなり力が入っており、隅から隅まで見るとその書き込みに圧倒されます。
音楽は松本文紀氏が担当しており、OP/ED/BGMどれも素晴らしい完成度になっています。サントラ欲しいよ…
悪い点
- すこしご都合主義な点がある
シナリオの終盤の展開は、少し強引じゃないかな~と思う箇所がいくつかありました。シナリオの考察重視で遊ぶのはあまりお勧めできないかもしれません。
個人的には、些細な点が気にならないほどラストが最高だったので終わり良ければ全てヨシ!!って感じです
- サブキャラの掘り込み不足
先述した通り、サブキャラも非常にいいキャラが揃っているのですが、あまり深堀はされません。ただ、あまり書いてもテンポを損なってしまうと思うのでこれでよかったのかもしれません。
サブヒロイン?的な立ち位置の水菜萌に関しては、シナリオでの扱いに少しもやっとする人もいるかもしれません。
総評
加点方式なら120点!!といった感じの素晴らしいビジュアルノベルだと思います。シナリオは王道寄りではありますが、丁寧な描写に心掴まれること間違いなしです。
価格・プレイ時間の割には体験の濃度があまりに濃く、万人に受け入れられる作風だと思うので、ぜひプレイしてほしい作品です。
とりあえずオープニングを見て、ちょっとでも興味を持ったらプレイしよう!!!
ゲーム音楽ピックアップ
- 光放て!
"櫻ノ詩"と雰囲気の似たパワフルなオープニングです。良すぎる。
- 海中都市
上のサントラ視聴動画の最初に出てくる海中の曲です。広く・深い海の雰囲気が出ていて良いです。
- 暖かな時間
暖かすぎる…… ここまで作中の空気感に合った曲を作れるのは凄いです。
- 涙が輝く瞬間
オープニングの歌詞が曲のタイトルになっていますね。エンディングのライトモチーフになっています。
- 親愛なるあの日々へ
ラスト近くで流れるのが印象的な曲です。
- Dear Monets
エンディング曲です。ATRIが歌っているという演出になっています。ぜひゲーム中で聴いて欲しいです。