ジャンル | ビジュアルノベル(18+/AllAge) |
メーカー/ブランド | Circletempo |
発売年 | 2008 |
ハード | PC(Steam,Booth) |
お気に入り度(0~10) | 10 |
プレイ状況 | 全シナリオクリア/Steam版 |
MYTH
— SPD (@SPD_9X2) 2020年6月22日
Steam版全要素回収
完璧主義を極めた結果影を捨てた「光の世界」に住む主人公がある日、影を持つ少女を見つけてしまい影の世界へ向かうというストーリーのadv
難解で一見関係無さそうな要素を大量に展開し、後から線で結んでいく構成が最高だった
心から遊べて良かったと思える素晴らしい作品 pic.twitter.com/rektIwDZqW
これを遊んだのももう2年も前なのですね…
余りに強く印象に残っているので、ついこの前遊んだような感覚です。
もう少し忘れてきたら再プレイしたいですね
ネタバレは避けるのでご安心を
MYTH とは?
store.steampowered.com
Circletempoが2008年に発表した同人のビジュアルノベルです。オリジナルはR18ですが、全年齢版もあります。とはいえ、変更点は恐らく一か所だけ(?)なので、内容にほぼ差はないと思われます。
現在(2022/07/26)は、Boothでオリジナル版と全年齢版が、Steamで全年齢版が販売されています。
Steam版は、セール時に500円程度で購入できます。
空を眺めてた。
明日の無い空。
すべて終わった場所。
私、ひとり。
MYTH
ひとつの決意を固めて、私は、それと向き合う。
無機質に佇むそれに向かい、私は呟く。
“光のモノよ”
“どうか、その扉の先へ”
“そして、私の、元に”
―― Steam版ストアページより引用
概要・ゲームシステム
ゲームシステムとしては、完全に一般的なノベルゲームです。分岐もあります。
ノベルゲームの核であるシナリオ、今作を一言で言い表すならば「計算され尽くされた電波」といった感じでしょうか。本作はまず、以下の2つのシナリオが並行して進んでいきます。
- 影を持たない光の国の住人"命人"が、影のある少女を街で発見してしまう。気になって後をつけた命人は謎の声に導かれ、逆に影のみの住人の暮らす"影の世界"に迷い込む。
- 母に身体をちぎって食べられていた少年が少女に出会う話 (電波すぎてこれ以上あらすじが説明できません…)
前者は、舞台背景こそ独特ですが、分かりやすい属性のキャラクターが登場し、ありふれたドタバタ系コメディ(?)のような展開で進んでいくので、まだとっつきはいいと思います。しかし、後者の方は何から何までが狂気的でこの作品が普通ではないことを教えてくれます。
そして、1の物語が佳境を迎えたとき、一気にこの作品が真の姿を見せるようになります……
何から何までネタバレになりそうな作品なので、これ以上は書かないでおきます。ちなみに、キャラ別のルートといったものはなく、作品全体の構成としてもやや独特な感じになっています。
UIに関して、一般的にあるものは充分揃っています。特殊なものとして、人物相関図・ノートがあります。どちらも、それまでに登場した情報が随時書き込まれていきます。本作の超難解なシナリオの理解に少しは役に立つかもしれません。また、本作のシナリオは細かくシーン別に名前がついて区切られており、いつでも見返すことができます。
本作には、おまけとして「Aguni-運命の先-」というフリーゲームとして公開されている作品が付いています。本編は、このフリー作品の設定を内包するような感じで作られています。いつでもプレイすることはできますが、個人的には1章と2章の間にクリアすることをお勧めします。
良い点
- 予想不可能な大胆・電波なシナリオ展開
本作のシナリオは、序盤こそおとなしいですが、中盤以降は大胆な展開が頻出します。ほんの少し先がどうなるのか、全く想像ができないので、びっくり箱を開けるようなドキドキ感を常に味わうことができます。
また、電波な展開が多いですが、文章自体は明快で怪文書になっているというわけではありません。一つ一つはありがちで分かりやすい要素ですが、その混ぜ方が狂気的という感じでしょうか。食べ物で言えば、とてもではないが食られないものが出て来るのではなく、普通なら食べ合わせない物が一緒に出て来る感じですかね……?
- 「理解できる」と「理解できない」の絶妙なバランス
難解と言われがちな本作ですが、全てが理解できないわけではなく、部分的には分かることもあります。一応最後まで読破すれば、どんなシーンがあったか等は説明できます。
ただし、本質的な部分に関しては全く分からないことが多いです。「あのシーンはどういう意味だったでしょう?」「結局○○をしたのは誰でしょう?」みたいなことを聞かれると、答えられないことも多いと思います。
サスペンスには、「分からないこと」が必要です。例えば推理物では、犯人やトリックなどがこれに当たると思うのですが、本作は「理解できない」ものの枠に「物語自体」を突っ込むことで、独特なサスペンス感あふれる作品に仕上がっています。
- 緻密に構成された設定・物語
本作の設定・シナリオの作り込みは常軌を逸しており、とてつもない量の伏線がシナリオ中に仕組まれています。ただ、伏線が回収されたことが分かっても、あまりに難解で結局何だったのかわからないことも多々ありますが…
しかし、その作り込みは本物なので考察を楽しめる方ならばとても満足できるでしょう。
- 全然わからないのに何故か燃えるし感動する
これは本作のかなり不思議な点です。登場人物たちが何のために動き、何を達成したのかもいまいちわからないのに、要所要所では感動し、燃え上がる自分がいることに気が付きます。理解していなくても読者の心を動かす、巧みな文章には感心させられます。
ラストも、全然わからないのに清々しい読後感のいいエンディングでした。
- 高品質なサウンド
まず、オープニングとエンディングの曲は素晴らしいです。
それだけではなく、ゲーム中のBGMも高品質で良い曲が揃っています。
気になった点
- 絵が上手くないCGがある
一応ジャンル的にはビジュアルノベルですが、一部お世辞にも上手いとは言えないCGがあります。ただ、立ち絵は良いですし、同人作品特有の味が出ていてそこまで気にはならなかったです。
- かなりマイナーなので、考察がネットに落ちていない
考察が面白い作品ですが、とてもマイナーなのでネットに考察が溢れているわけではありません。すべて自分で読み解いていかなくてはいけない硬派な考察ゲーと言えるかもしれません(?)
総評
個人的には、今まで遊んだ中でもトップクラスに面白かった作品です。本当に「分かる」と「分からない」のバランスが絶妙なんですよね。中盤以降、怒涛の展開(というか、想像もつかないような展開)が続くので、一度始めれば最後まで一気に駆け抜けてしまうこと請け負いだと思います。何週もして考察をするのも良いですね。
他に類を見ない独特な作品ですので、ノベルゲームが好きな人にはぜひ遊んでいただきたいです。
ゲーム音楽ピックアップ
- 影、ミツメル、光
上の方に貼ったOPの曲です。本作の狂気の片鱗を感じさせてくれる不思議な曲構成が好き。
- 作られた時間
光の世界のテーマ曲。穏やかでありながら、どこか味のない無機質な感じが最高です。
- 宵徒然
夜のテーマ曲。穏やかな日常~って感じの曲です。まぁ、そんな日々も長くは続かないのですが…
- MYTH
ここぞという時に流れる曲ですね。穏やかさの中に溢れるパワーが良いです。
- 神々の歌
エンディング曲です。流れるタイミングが最高。