【ゲームレビュー33】カエルの為に鐘は鳴る

レビュー一覧

ジャンル アクションRPG/ADV
メーカー/ブランド 任天堂インテリジェントシステムズ
発売年 1992
ハード

GB,3DSVC

お気に入り度(0~10) 8+
プレイ状況

クリア/3DSVC版

 

 
名作と聞いていたので、3DSVCで駆け込み購入
この作品がGBで出ていたのは凄いですね~ 特に思い切った構成とシステムは、昨今のインディーゲームを遊んでいるような感覚になりました。
例のごとくネタバレは回避して紹介します。

 

カエルの為に鐘は鳴る とは?

www.youtube.com

公式HP:

https://www.nintendo.co.jp/n02/dmg/okj/index.html

 

任天堂が1992年に発売したゲームボーイ用のアクションRPGです。「大冒険アドベンチャーゲーム」と公式サイトには書かれていて、実際アドベンチャーゲーム要素が非常に強い作品となっています。

GBはカセット版に加え、ニンテンドーパワーの書換ソフトとしても配信されていたらしいです。

GB版以外には、3DSバーチャルコンソールで配信されています。サービス終了後は、GB版を遊ぶしかなくなってしまいます。任天堂作品は実機が無いと遊べない物が、イメージに反して多いんですよね。本作もその仲間入りといったところでしょうか。

 

概要・ゲームシステム

ジャンルとしてはアクションRPGに分類されると思います。

ゼルダの伝説」を恐らくかなり意識しており、スクリーンショットを知らない人が見たら間違えてもおかしくないかも。実際、「ゼルダの伝説 夢をみる島」では本作のキャラクター「リチャード」がゲストとして出演しており、2作品の繋がりは強いです。

ただ、ゲームのプレイフィールは「ゼルダ」とは全く異なる作品となっています。特に大きく異なるのは戦闘システム。本作の戦闘システムは、なんとオートバトルとなっています。フィールド上の敵に触れるとバトル開始となり、どちらかが倒れるまでボカスカ殴り合います。途中で逃げたりアイテムを使うこともできますが、正直戦闘自体にゲーム性といったものは全く存在しないと言ってもいいでしょう。また、ゼルダシリーズのもう一つの柱でもある探索要素も、本作は抑えめになっています。

では、本作の面白さはどこにあるのか。本作では戦闘・探索の代わりにアドベンチャーゲーム」の要素をふんだんに注入することでゼルダそっくりの見た目でありながら、濃密なイベントとジョークを楽しむ作品に仕上がっています。

 

本作の主人公は、サブレ王国の王子。隣国の王子であり、友人でもあるリチャードに剣術の稽古でボコボコにされていたところ、ミルフィーユ王国の城が狙われ姫が囚われてしまったという知らせが来ます。

リチャードは姫を助けるため船に乗って颯爽と出発! 一方置いて行かれたサブレ王国王子は、近くにいた船乗りに大金を押し付けて金のパワーで船をゲットし追いかける!!

といった感じで物語が始まります。最初に9999999円あった所持金欄が一気に減ったとき、ファンの間でネタにされていそうな始まり方だなぁと思ったのですが、最後までふざけたノリが続くので、特筆するようなシーンでは無かったという……

そんな感じのふざけたノリのイベント、これが本作にはぎっしりと詰まっており、メインコンテンツとなっています。中には時代を感じるネタもあり、今プレイするとその古さがいい味を出しています。

一方でストーリー自体は、お使いイベントがほとんどで、そこまで劇的な展開があるわけではありません。それでもラストには2人の王子の友情物語に少ししんみりした気持ちになれます。

 

本作の戦闘にゲーム性がほぼ存在しないことは先ほど述べましたが、ではどこがアクションRPGなのかという点についてです。本作にはゼルダのような見下ろし型のマップの他に、メトロイドのような横スクロールアクションのマップがあります。洞窟や城などのダンジョンはほぼすべてこの形式になっています。横スクロールアクションのステージでは、敵を避けつつ足場を飛び回るプラットフォーマー的なアクション要素が求められます。難しくはないですが、ダンジョンは長いことが多いので途中セーブを駆使することが前提な感じがあります。これが本作のほぼ唯一のアクション要素です。

 
カエルの為に鐘は鳴る」というタイトル、「王子」が主人公である点から容易に想像ができると思いますが、本作には2人の王子がカエルにされてしまうシーンがあります。中盤あたりから人間状態とカエル状態、そしてカエルの天敵であるヘビ状態をアイテムで自由に切り替えられるようになります。横スクロールダンジョンでは、この3つの状態をうまく切り替えて進んでいくことになります。

カエル状態はジャンプ力が高い他、敵兵士に戦闘を挑まれなくなります。また、虫系の敵を食べて回復することができます。

ヘビ状態はジャンプ力が極端に低くなりますが、狭い通路を抜けることができます。また、他の蛇と戦闘にならなくなります。

面白いのが、カエル状態の時の兵士や、ヘビ状態の時の他の蛇とは会話ができることです。人間状態の時は敵キャラクターだったのが、状態を変えるとNPCになるというのはかなり珍しい仕様ではないでしょうか。

 

良い点

  • 濃密なゲーム体験
     
    上述した通り、本作は最初から最後まで高密度でイベントが配置されています。最初から最後まで、プレイヤーに飽きさせる隙を与えず駆け抜けるようなゲーム展開は、恐らく意図して設計されたもの。
    短い作品ですが、ゲームプレイの濃度が非常に高く、もっと長い作品だったような錯覚すら覚えます。
    当時は今よりもゲーム機の性能が注目されやすかった時代、アーケードやSFCと比べると性能が低く、ゲーム雑誌でも扱いが小さかったゲームボーイですが、そんな限られた性能の中でプレイヤーの体験を最大化した作品といえるでしょう。
    ゲームの体験はゲーム機の性能では決まらないんだ!! その証拠といえるような仕上がりになっています。
     
  • 大人でも楽しめる、ちょっとブラックなジョークの数々
     
    本作には最初から最後までちょっとブラックなジョークがぎっしりと詰められています。本作はGBで発売されており、そのパッケージデザインからも、子ども達がプレイすることを念頭に入れて開発された作品であり、世界観もそれに準じて設計されています。
    そんな世界観だからこそ、「大人の世界」の不条理さや汚さの片鱗をブラックジョークとして盛り込むことで、化学反応が起きて作中世界にリアリティが生まれるのです。
    特に、本作のメインテーマである2人の王子の友情物語は、2人がどちらも聖人君子などではなく、「大人の世界」に生きる汚いところもある人間であることがしっかりと描写されるからこそ、グッと来るのではないでしょうか。

  • 低い難易度
     
    本作は先述した通り、イベントシーンがメインに据えられた作品です。そのため横スクロールアクションのシーンでも難易度は低く設定されており、どこでもセーブできることも相まって、難しくて進めないという事態はほぼ起きないようになっています。
    当時は、高難易度であることが今よりも容認されていた時代ですが、盛り上がる場面でもないのに無意味に難易度を上げてプレイ時間を水増しするのは、プレイヤーのやる気を削いでしまい、体験の質を低下させてしまいます。
    本作のアクション部分には、高難易度は必要ないことをしっかり認識し、ちゃんと誰でもクリアできる作品に仕上げているのは流石としか言いようがありません。
     
  • 素晴らしい楽曲・デザイン面
     
    本作の面テーマであり、フィールドの曲である「王子の冒険」は一度聴いたら忘れない素晴らしい完成度を誇る楽曲となっています。
    フィールドやUIも、GBの白黒を全く不便に感じさせないような明瞭なデザインになっています。また、キャラクターの顔がアップで表示されるイベントシーンでは、ハイクオリティな(しかも動く!)立ち絵を見ることができます。
     

気になった点

  • 消費アイテム
     
    本作は、カエルとヘビ、そして人間状態を適宜切り替えて進んでいきます。状態が変わると、フィールドに存在する敵やNPCの反応が変わり、世界の見た目が一変するのでこれ自体はとても面白いシステムです。
    しかし、状態切り替えに消費アイテムが必要なのが厄介です。横スクロールのダンジョン内では頻繁に切り替えが要求されますが、持ち込んだ数が少ないと先に進めず、ダンジョンを出て補充する必要が出てきてしまいます。
    ダンジョンは長いものが多いため、再攻略はかなり面倒です。アイテムを消費で無くしたり、ダンジョン突入前に所持数の目安を教えてくれたり、ダンジョン中にもショップを置いてくれたりすれば、このような事態が起こらず良かったなと思います。
     
  • 戦闘で逃げられない場合がある
     
    敵と戦闘になった際、相手が強いと逃げられないことがあります。
    特に、カエル・ヘビ状態の時は敵にダメージを与えられず、基本的に一方的に殴られます。
    言い換えるとカエル・ヘビ状態においては、「逃げられない敵に触れる = 死」 になってしまっています。そのため、セーブを怠っていると突然大幅に戻されることになってしまい、やらかしてしまうとストレスになります。

 

総評

GBというハードの制約内で、如何に濃密な体験が可能か、その限界に挑戦したような作品です。2022年の現在遊んでも、全く飽きさせる隙を感じない構成となっており、長年愛されているのも納得の完成度。
今後は実機でしか遊べなくなってしまうのが残念ですが、もし環境さえあるのならば、プレイ時間も短いですからぜひ手に取ってほしい作品です。

 

ゲーム音楽ピックアップ

  1. メインテーマ
    タイトル画面の曲。イントロであらすじを説明し、タイトルが出ると同時に盛り上がるのが素晴らしい。リセットする度に聞くので印象に残ります。
     
  2. 港町 シーミズ
    海辺の町の曲。GBの音源で、誰が聞いても波の音と分かる音が素晴らしいです。
     
  3. 王子の冒険
    説明不要な名曲。フィールド上でずっと聞くことができます。
     
  4. ゲロベップ温泉
    温泉感出すのがあまりに上手い。どちらかというとドリフ感かもしれませんが。
     
  5. 最後の決闘~エンディング~スタッフロール
    ゲームの展開と合わせて、音楽も劇的に展開するエンディング。鐘(?)を意識した音が心にしみます。