【ゲームレビュー53】It Takes Two

レビュー一覧

ジャンル 2人プレイ専用 3Dアクションアドベンチャー
メーカー/ブランド 開発:Hazelight / 販売: Electronic Arts 
発売年 2021
ハード Win(Steam他),Switch,PS4,PS5,XBoxOne,XBox X/S
お気に入り度(0~10) 8
プレイ状況 クリア / Steam版

 

 

It Takes Two とは?

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Hazelightによって開発され、Electronic Artsによって販売されている2人プレイ専用の3Dアクションアドベンチャーゲームです。

Win版の他, PS4,PS5,Switch,XBoxOne,XBox Series X/Sなど各種コンソールで販売されています。

フレンドパスが各コンソールで用意されていて、こちらをインストールすれば、もう一人が製品版を購入していれば一緒にプレイすることができます。同系統の機種間の世代間互換性はあるようですが、クロスプレイは非対応のようです。

日本語対応はUI・字幕・音声吹き替え共に対応されていて、クオリティも高いです。

 

概要・ゲームシステム

2人専用プレイであることが最大の特徴の3Dアクションゲームです。
プレイヤーキャラクターは、離婚の危機にある夫婦の「コーディ」と「メイ」。娘が仲直りを願ったところ、魔法の力で人形になってしまい、人間に戻るために2人が奔走するというストーリーです。

人形になってしまった夫婦

人形になったことで、相対的にあらゆるものが大きくなってしまった世界を舞台に、意思を持った家電やおもちゃ、そして小動物や虫たちなどの不思議なキャラクターたちとの交流や戦闘を交えてストーリーが進んでいきます。時折入るカットシーンの他にも、アクションパート中にメイとコーディの掛け合いが挟まります。

本作のアクションは基本的に、3Dプラットフォーマーと呼ばれるジャンルを踏襲しています。3Dマリオ等を想像していただければわかりやすいと思います。ジャンプ・壁キックや、ヒップドロップ等は3Dマリオでもおなじみですね。しかし、マリオみたいなゲームであるかと聞かれれば、それは違うと答えざるを得ません。

本作の最大の特徴は、2人のプレイヤーの協力が必要不可欠なレベルデザインが為されていることです。複数人で協力して遊べるプラットフォーマーはいくつも他にありますが、本作は両者が適切に協力しないと絶対にクリアできないようになっています。一人が扉のボタンを開けているうちにもう一人がその扉を潜るといった凡庸なものも勿論ありますが、そのような単純なものに留まらない驚きとアイデアに溢れた様々な協力要素が全編通して登場します。

特に、各キャラクターに固有の役割が与えられ、非対称の協力ゲームになるのは珍しいと思います。例えば、序盤のあるステージでは各キャラクターにそれぞれ違った武器が配られます。具体的には、コーディは粘性のある爆発ジェルを発射する銃、メイには火を噴く銃が与えられます。これらの銃を活用して、爆発ジェル+火で壁を破壊する。ジェルでレバーを下げた後に、火で爆破してレバーを戻す。ジェル銃を船の推進力にしつつ、敵を火の銃で倒す…… 等々、協力アクションを活用して進んでいくこととなります。

コーディーはジェルを船の推進力に。メイは火の銃で敵と戦う

本作のゲーム画面は左右に分割されていて、それぞれのキャラクターが3人称視点で表示されます。左がメイで右がコーディ。オンラインプレイ時にも変わらず相手の画面が表示されます。これは、時に相手の画面を見る必要があるレベルデザインが為されているためです。本作がお互いの状況をしっかり理解して協力する必要があるゲームだからこその仕様といえるでしょう。

 
さて、ここまで述べた通り本作は基本的には協力ゲームです。しかし、それだけではなく、時々「対戦」の要素を仕込んできます。その最たる例は、ステージ各所にひっそりと配置されたミニゲームの数々でしょう。ミニゲームスポットを発見し、2人が位置に着くとミニゲームが開始します。射的、レースといったアクション性の強いものが多いですが、中にはチェス等アクション要素が皆無のものもあり、そのレパートリーは豊富。ミニゲームだけで何と25種も用意されているらしく、本作はミニゲーム集として見ても最低限のクオリティが担保されていると思います。ミニゲーム以外にも、突発的な競争シーンが入るなど、対戦要素を所々に仕込んでいます。

ミニゲームはシンプルなものから手の込んだものまで多種多様


世界観描写が丁寧で色濃いのも本作の特徴かもしれません。アクションの舞台となるステージは、ゲーム然とした無機質な世界ではなく、しっかりと「夫婦が迷い込んでしまった不思議な世界」の描写が行われています。単純なパターンの繰り返しや、ゲームのアクション性のためにお約束のように置かれたオブジェクトはありません。細部まで作り込まれた不思議な世界の描写は、ディズニーのアニメーション映画を彷彿とさせます。美麗で幻想的な世界観を味わうだけでも、本作をプレイする価値があると言えると思います。
 

良かった点

  •  濃密でボリュームたっぷりなゲーム体験
     
    本作の素晴らしい点は、何と言ってもプレイ体験の濃さでしょう。ビジュアル面・アクション面の双方において、新しい刺激がどんどん投入され、それがラストまで息切れせずにずっと続きます。本当に最初から最後まで似たシーン・ローケーションが無いのは凄いです。時にはゲームシステム自体が大きく異なるシーン ( 例:フライトシューティングになるシーン等 ) も多数登場します。
    途方もない手間がかかっているんだろうなぁと感嘆しまうクオリティのシーンの数々を、ジェットコースターのように一気に駆け抜ける構成には、ビュッフェを前にした時に感じるような豪華さを感じざるを得ません。この、プレイしている時に感じる「豪華さ」に関しては、本作を超えるものは中々無いでしょう。
     
  • 非対称だからこそ映える協力要素
     
    本作の協力要素の多くが、非対称であることは先述しました。非対称の協力要素の導入は、「自分の役割」「相手の役割」を強く意識させ、協力してる感を演出するのに大いに貢献しています。また、キャラクターを入れ替えて遊ぶことによるリプレイ性の確保にも繋がっていると思います。
     
  • 良いスパイスとなっている対戦要素
     
    時々登場する対戦要素は、ゲームプレイにメリハリをつけるスパイスのような役割を果たしていると思います。先述した豊富なミニゲーム、競争シーンは勿論ですが、「協力シーンでの裏切り」を許すゲーム性も広い意味での対戦要素と言えそうです。本作では、協力が求められるシーンで敢えて裏切ると、もう一人が滑稽にも死んでしまうことがあります。一般的な協力ゲームではこれは只の嫌がらせですが、本作は死亡のデメリットが基本的には無いため、少しの悪戯程度では笑って許せるようになっています。
    何より、裏切った際にキャラクター同士が悪態を付く会話が収録されています。ここから、ある程度の悪戯をお互いにしつつ進んでいくことを想定して制作されている事が分かります。気が置けない相手とプレイするからこそできる、互いに攻撃の矛先を向ける戯れの楽しさを本作はゲームの面白さの一部として取り込んでいます。
     

気になった点

  • ストーリー (特に中盤のあるシーン)
     
    本作のストーリーは要約すると、「仲の悪い夫婦が、冒険を通し絆を取り戻していく」というものです。序盤こそ、このコンセプトに応えていて好印象でしたが、中盤にあるイベントが全てを滅茶苦茶にしてしまっています。具体的な内容は伏せますが、夫婦が(多くの人が許せないだろう) 超極悪な行動を行います。正直、このシーンを見た後に夫婦が応援できなくなり、感情移入でくなくなってしまったと感じる人は多いと思います。また、プレイヤーは極悪な行動を強制的に行わされるため、不快に感じる人も多いと思います。
     
    このシーンの完成度自体は高いと思うので、序盤にあれば「極悪夫婦が更生していく話」になってまだマシだったと思うのですが……… なぜあんな中盤にあるんだろう
     
    また、全体で見てもシナリオの本筋が全然進展せず、ダイナミックな展開が起こらないので、「ストーリーが面白い!!」とは言えない完成度だと思います。
     
  • 「じっくりと遊ぶ面白さ/中毒になる面白さ」に乏しい
     
    本作のアクションは難易度は総じて簡単なので、アクション自体が楽しさに寄与しているかと言われると微妙です。また、アクションシーンはパズル要素を多分に含んでいますが、パズルとして見ても非常に簡単です。そのため、アクションやパズル自体が面白いかと言われると疑問です。(例外的に、スピード感のあるアクションシーンは非常に面白いと思います)
    本作の面白さの多くは、新鮮な要素を大量に投入することにより実現されています。言い換えると、「新鮮な要素が登場したときの驚き」が面白さの内で大きなウェイトを占めています。
    そのため、本作はストラテジックなゲームのようにじっくりと考えて遊ぶ楽しさや、高難易度のシーンを頑張って乗り越える楽しさ、所謂「中毒性のあるゲーム」が持っている類の面白さに欠けています。
    面白さのベクトルが画一的で、それでいてボリュームがあるため、長時間連続プレイすると食傷気味になってしまいがちです。
    本作をプレイする際は、何回かに分け、適度に休憩しつつ遊ぶのがいいでしょう。

総評

凄まじい労力のかかった濃密なシーンの数々を、どんどんと消費していく超豪華なアクションゲームです。非対称の協力要素により、たっぷりと「協力してる感」を味わいつつ、適切に挟まれる対戦要素が良い刺激をもたらしてくれます。
気の置けない相手と遊ぶにはとてもいい作品だと思います。傍から見ているだけで面白い作品でもあるので、ゲーム配信にも最適だと思います。
気になった方は是非プレイしてみてください。
 
ただし、中盤に人によってはトラウマ級の酷いイベントがあるので、心配な方はネタバレ覚悟で詳細を調べてからの方がいいかもしれません。
  

ゲーム音楽ピックアップ

楽曲は豊富だったはずですが、シーンの変化が激しすぎて印象に残っていません。
強いて言うなら、ラストのメイの曲くらいかな……