【ゲームレビュー77】SANABI

レビュー一覧

ジャンル 2Dワイヤーアクションプラットフォーマー
メーカー/ブランド 開発: WONDER POTION / パブリッシュ: NEOWIZ
発売年 2023
ハード Steam(Win), Switch
お気に入り度(0~10) 8
プレイ状況 エンディング到達 / Steam版

 
2023年末の注目作みたいですね
日本語訳が改善されたというニュースを機会にプレイしました

ストーリー関しては全ての情報がネタバレになるような作品なので、具体的な内容にはあまり触れないように注意します。
 

 

SANABI とは?

store.steampowered.com 

韓国の大学生5人のチームWONDER POTIONが開発したワイヤーアクションプラットフォーマーです。パブリッシュは大手ゲームメーカーのNEOWIZが行っています。

アーリーアクセスを終え、2023年11月にSteamとSwitchで発売されました。

当初は日本語訳の質の低さが指摘されていましたが、今では改善しており、丁寧な日本語訳で楽しむことができます。
 

概要・ゲームシステム・感想など

ワイヤーを壁や天井に引っ掛け、振り子のように移動したり、ワイヤーを巻き取るアクションで進んでいくアクションが特徴のアクションプラットフォーマーです。
 
2Dのワイヤーアクションプラットフォーマーは「海腹川背」が有名でしょうか。
ワイヤーアクションは1ジャンルまでとは行かなくとも、アイデアとして時々見られるものな気がします。( 個人的に思いつくのはニュースーパーフックガール、ラスティッド・モス など )
 
本作「SANABI」はそんなワイヤーアクションゲームの中でも、特に疾走感・爽快感を重視したアクションが特徴の作品となっています。序盤でも、高速でステージを駆け抜け、スタイリッシュに敵を倒してどんどん進んでいくことができます。

ワイヤーを駆使してステージを駆け抜ける疾走感が凄い!!

疾走感のあるアクションを実現するために、とにかく操作性の良さには力が入れられています。ワイヤーは射出速度・長さ共に申し分なく、更には狙いを正確に定めずとも、引っかかってほしい箇所に的確に飛んでいく仕組みが取り入れられているようです。
 
攻撃は、敵に近寄ったのちにボタンを押すと、敵に向かって飛んで行って撃破できる仕組み。撃破の際に反動で好きな方向にジャンプできるので、敵破壊とワイヤーアクションでの移動がシームレスに繋がります。
 
ワイヤーアクションゲームは非常に難しい作品が多いイメージですが、本作はかなり易しめに感じました。どんな方でもスタイリッシュにステージを駆け抜ける爽快感を味わえるように丁寧に調整されていると思います。

難易度はベテランで遊びましたが、特に難しい箇所は無かったです

 

ゲームは、アクションパートとストーリーパートが交互に進行していきます。明確な区分けがあるわけではなく、互いのパートが自然に繋がるような構成になっています。

アクションとシームレスに繋がるストーリーが没入感を高める

 

ストーリーパートにおいてはビジュアル面に非常に力が入れられています。気合の入った超美麗なドット絵グラフィックと派手な演出が最高です。

サイバーパンクな廃墟感のあるビジュアルが素敵

時には巨大ボスも登場。
ボス戦の演出には特に力が入れられていて、まるで映画のよう。本作の大きな見どころのひとつです。

ボス戦も劇的な展開に溢れた一筋縄ではいかない構成になっています

ストーリーは、突然全市民が消滅した都市を舞台に、謎の人物「SANABI」を追っていくもの。サイバーパンクな世界で繰り広げられる緊張感のあるストーリーになっています。サスペンス要素もふんだんに盛り込まれ、常に先が気になる構成になっています。
序盤から丁寧に張り巡らされた伏線には唸らされること間違いなしです。
 
全体的にアクション映画のような構成ではありますが、家族愛がメインテーマになっており、終盤には胸の熱くなる展開が待ち受けています。
 

 
なお、アクションゲームにありがちな隠し要素や収集要素などは一切存在しません。恐らく、隠し要素があるとステージを丁寧に探索しないといけないという義務感が発生してしまい、疾走感を損なってしまうからだと思います。ゲームの体験の軸をしっかりと見据えて開発されているのが伝わって来て、個人的にかなり感動したポイントです。 
 
プレイ時間は10時間程。

全体として無駄なく非常に綺麗にまとまった作品で、どんな方にでもお勧めできる作品だと思います。スタイリッシュなアクションゲームが好きな方は勿論、サイバーパンクな世界観やドット絵風グラフィックが好きな方にもおすすめです。
 

ゲーム音楽ピックアップ

youtube.com

store.steampowered.com

サウンドトラックは、Steamで配信されている他、Youtubeに公式でアップロードされているようです。
サイバーパンク感あふれる楽曲が揃っています。

 

 
 

【ゲームレビュー76】q.u.q.

レビュー一覧

ジャンル 短編ビジュアルノベル
メーカー/ブランド 開発: motijan / パブリッシャー: Nikita Kryukov
発売年 2023
ハード Steam(Win,Mac,SteamOS)
お気に入り度(0~10) 7
プレイ状況 全実績解除 / Steam版

 
短編ゲームを遊びたい気分になったので積んであった本作をプレイ
 

q.u.q. とは?

store.steampowered.com

www.youtube.com 

国外の個人開発者 motijan(いめ44)氏が制作、2023年にSteamでリリースした短編ビジュアルノベルです。
丁寧な日本語翻訳が収録されています。訳者のコメントが以下で公開されているので、読後に読んでみると面白いです。

 

note.com 

概要・ゲームシステム・感想など

尖ったビジュアルと世界観、そして主人公のがさつな女の子が特徴の短編ビジュアルノベル。Milk inside/outside~ の作者の方がパブリッシャーとして関わっていらっしゃるようで、本作の制作に直接関わっているかは分かりませんが、世界観描写やビジュアルに似たようなテイストを感じます。

オリエンタリズムを感じさせるタイトルロゴが素敵です

ゲームシステムとしては、歴年のビジュアルノベルの形式を取っています。多すぎるくらいのセーブ枠に、便利な既読のみのスキップ機能、バックログ機能など近年のVNにある機能が揃っています。
エンディングは11個。選択肢によって分岐が起こる王道スタイルです。それぞれがSteam実績になっているので、全回収まで遊ぶ人が多いのではないでしょうか。
 

 

物語は、砂漠をさまようちょっとがさつな少女ハッチと、出会う謎に満ち溢れたの諸々を描くもの。恐ろしい見た目の相手にも粗暴に振る舞うハッチの頼もしさと、時折見せる弱さが素敵。心に抱える闇と旅の目的が主題となって物語が進んでいきます。
 
本作はMilk inside/outside~ を彷彿とさせる奇妙な作風ではありますが、狂気ベースの語りではないため、素直に物語と向き合うことができます。
またテキストは第一印象からは想像できない程素直で読みやすく、情景を想像しやすいので却って世界の寂しさと奇妙さが強調されています。
 

 
物語は童話的で、ほんの少しSFを感じるテイスト。
劇的な展開は多くはありませんが、一部のエンディングにはびっくりするかも。
 
奇妙で寂しい世界を満喫する作品と思ってプレイするのがよさそうです。
 
ライブラリに入れておいて、気が向いた午後にプレイしてみてはいかがでしょうか
 

ゲーム音楽ピックアップ

youtu.be 

本作のサウンドトラックはSteamで配信中。
また、youtubeにも作者の方がアップロードしています。

 

 
 

【ゲームレビュー75】MOTHER3

レビュー一覧

ジャンル RPG
メーカー/ブランド 任天堂
発売年 2006
ハード GBA, Switch(GBA for Nintendo Switch Online)
お気に入り度(0~10) 8+
プレイ状況 Ending到達 / GBA for Nintendo Switch Online

 
Nintendo Switch Online+に追加されたのでノリで始めたのですが、一気に最後までプレイしてしまいました。2を先に最後までやっておいた方がよかったかもしれない……
紹介する以上どうしても軽微なネタバレは避けられない作品ですが、重大なネタバレは避けて紹介します。
  

 

MOTHER3 とは?

www.nintendo.co.jp

youtu.be 

任天堂が2006年に発売したゲームボーイアドバンス向けのRPGです。
長らく移植が無くGBA版を購入するしかありませんでしたが、2024/02/21のNintendo Directでサプライズ的にGBA for Nintendo Switch Online版配信が発表されました。
 
初代「MOTHER」はFC、「MOTHER2 ギーグの逆襲」はSFCのタイトルですが、両者共にNintend Switch Onlineでプレイできます。
シナリオに関しては 2 の直接的な続きでは無いものの、前作のシナリオとも深く関連があるようなので、事前にプレイしておいた方がいいかもしれません。
 

概要・ゲームシステム

 
「MOTHER」シリーズの特徴は、独特の世界観と味のあるテキスト、そして愛らしいビジュアルでしょう。あらゆる面でディレクターの糸井重里氏のセンスが炸裂し、過去のどんな作品にも似ないRPGシリーズとなっています。
近年では、「UNDERTALE」を代表とするMOTHERの遺伝子を引き継ぐ作品も登場しています。現在では、RPGの一つのスタイルを築いたシリーズといえるでしょう。
 

 

MOTHER3」は、そんなシリーズ3作目。
企画から実際に発売に至るまでに相当な困難があったことが有名です。当初はSFC向けに開発していたものが、64向けに変更され、発売直前まで漕ぎつけていたものが中止。その後しばらくしてGBA向けに開発が再開され、GBA末期に発売されたという経緯があるようです。
 

さて、MOTHER3の冒険の舞台は不思議な島「ノーウェア島」です。島にある小さな村「タツマイリ」に暮らす双子のクラウスとリュカは、母のカナワと共に、山の上にある叔父の家に遊びに行っていました。村で帰りを待つ父のフリントの元に、山火事が起きたという知らせが来るところから物語は始まります。
 

 
この始まりの不穏な事件は、更なる不穏な展開へと繋がります。その後も作中を通してダークな空気感が一貫しており、この点に関しては当時は賛否あったようです。
本作のシナリオの大きな特徴として、主人公が変わる点が挙げられるでしょう。1章では、山を捜索するフリントの物語が描かれますが、2章・3章・4章以降ではまた違うキャラクターが主人公となります。物語が様々な視点から描かれることで、多数の要素や伏線が複雑に絡み合った重厚感のあるシナリオになっています。

章によって主人公が変わるRPGは中々珍しいのでは?

 

なお、終盤の展開は癖が強く好みの分かれるものとなっており、発売当初は酷評されることもあったようです。
 
グラフィックには2と同様にドット絵の可愛らしいグラフィックが採用。マップは細かいところまで丁寧に描かれ、キャラクターの奇抜なデザインも健在。グラフィックと独特のセンスのテキストが織り成す糸井節は本作でも十分に発揮されています。

HP回復は「おんせん」で行うというのも独特

2にも登場する謎の種族「どせいさん」の台詞回しは個人的にも大好きです

RPGとしての自由度は高いわけではなく、基本一本道の構成です。しかし、その分各イベントやテキストに力が入っており、アドベンチャーゲームを遊んでいる感覚が強いです。このプレイ感覚もMOTHERシリーズの大きな特徴かもしれません。
 
戦闘は一般的なコマンドRPGに近いものの、いくつかMOTHERシリーズに特有のシステムが導入されています。
サウンドバトル」は、戦闘曲に合わせてボタンを押すと複数回通常攻撃を当てられるというシステム。敵ごとにリズムが違うので、曲をしっかり聴いてリズムを推測する必要があります。
「ドラムロールシステム」は、HPやMPの表示が一定速度で回転するドラムロールで行われるシステムです。致命的なダメージを受けたとしてもHPのドラムロールが回転していって0になるまでは戦闘不能にならないので、素早く操作すればHPを回復して耐えることができます。
また、各キャラには「とくぎ」が設定されており、特殊な行動が可能です。敵の行動を封じたり、弱点を調べたり、MPを消費して強力な攻撃を放ったり…… キャラごとに大きく傾向が異なるので、パーティ内での役割分担が重要となります。

特技は複数あり、敵によって有効・無効が異なります

 

戦闘は比較的難しく、ボス戦は回復アイテム集めやレベル上げなど入念な準備をした上でも苦戦するバランス。ドラムロールシステムのお陰で素早い判断が要求されることもあり、中々手に汗握る熱い戦闘を楽しめます。
通常戦もシンボルエンカウントのため、ある程度回避可能なのも嬉しいところ。敵キャラクターが多く、固有ドロップなども用意されているので、初めて見た敵にはむしろ積極的に勝負を挑みたくなります。
 

プレイ時間は25時間ほど。RPGとしてはやや短めなので手軽に遊べます。
 

良かった点

  • 強烈に発揮されている糸井節
     
    可愛らしく少し奇妙なキャラクタービジュアルに、細部まで意味が敷き詰められ淡泊さを感じさせない血の通ったマップのデザイン、そしてシュールな笑いとアイロニーのセンスに溢れたテキスト。
    糸井氏のセンスが本作でも強烈に発揮され、MOTHERシリーズ特有の世界観を存分に味わうことができます。
     
  • テンポ良く、常にプレイヤーを引き付けて離さない高密度なゲーム展開
     
    大小様々なイベントが小刻みに起こるので、一般的なRPGよりもプレイ感覚がかなりアドベンチャーゲームに近いです。RPGにありがちな、淡泊な構成のダンジョンを長時間彷徨ったりすることはありません。戦闘に関しては、ボス戦の数が多く、通常エンカウントの敵も種類が非常に多いので同じ敵と延々と戦うようなことはありません。全体として見て、プレイ時間に対して惜しみなくゲーム要素が投入され、充実感のある高密度なゲームプレイが味わえるようになっています。
     
    シナリオも大きな流れの中で小さな動きを多数作る構成になっているため、テンポよく、それでいて分かりやすく物語が進行します。続きが気になるようなフックを常に用意し、切らさない構成も見事。一度遊び始めたが最後、エンディングまで一気に駆け抜けてしまうこと請け負いです。
     
  • バランスの良い戦闘
     
    戦闘は、全体的にやや難しめです。特に、終盤は苦戦するボスが多かったです。
    しかし、難しいと言っても多少の準備と戦略で何とかなる場合が殆どで、手を尽くしても難しいかというとそこまでではありません。
    サウンドバトルとドラムロールシステムのお陰で、戦闘にリアルタイムのボタン操作が要求されることもあり、準備を念入りに行った上でもしっかり考えて戦闘する必要があるのも緊張感があり良かったです。
     
  • 力の入ったサウンド
     
    本作はサウンドにも非常に力が入っています。特に音楽を用いた演出は秀逸で、各シーンに説得力を与える役割を完璧に果たしています。
    また、短いテーマをアレンジして随所に登場させる映画的な楽曲制作が行われており、音楽が伏線になっていることも……(?)
     

気になった点

  • セーブが2個
     
    セーブスロットが2個しかありません。
    一度進むとボスを倒すまで戻れない箇所もあり、上書きセーブをしてしまい、尚且つ倒す準備ができていないと苦戦は必至です。
    取り返しのつかない要素がいくつかあるのもセーブスロットの少なさと相性が悪いです。
    Switch Online版なら、どこでもセーブが使えます。章の終わりにセーブをバックアップで取っておくと良いでしょう。
     
  • MP回復手段の乏しさ
     
    一部キャラが使用できる超能力PKを利用するために必要なMPですが、回復アイテムの数が少なく、大量に入手することも困難です。一方でボス戦ではPKが貴重なダメージリソースとなっているので、ボスが居るところまで頑張って雑魚敵を避けていくプレイになりがちです。
    ボス戦の前に回復できる箇所を置いてくれると良かったのですが……
     

総評

RPGはゲームプレイの淡泊さに耐えきれず途中で放り出してしまうことの多い私ですが、本作はとにかくゲーム要素が高密度で提供されるお陰で最後まで一気にプレイできました。UNDERTALEやOMORIなどが気に入った方は是非プレイしてみてはいかがでしょうか。2が未プレイの方はそちらから遊んだ方がいいとは思いますが…

賛否あるラストに関しては、多くを語らずにエンタメ性が低いため賛否あるのも納得でした。シビアで心苦しい展開が多いので、最後に大きな救いがある展開を期待してしまう気持ちも分かります。やはり個人的にも、すごく好きか?と問われると首肯し難い部分はありますが、MOTHER3のテーマはラストバトルで描ききっている気がするので、1つの終わり方としてはこれで充分だと思います。プレイ後に考察サイトなどを読み漁るのも楽しいですよ。
 

ゲーム音楽ピックアップ

  1.  MOTHER3 愛のテーマ
     
  2.  ひまわりとまぼろし
     このシーンが作中で一番好きです
  3.  スノーマン
     雪山の曲。通常フィールドの曲の中で一番記憶に残っています
     
  4.  ユートピアでしょ?!
  5.  16メモリーズ(はじまり)
     

 
 

【ゲームレビュー74】アクスレイ

レビュー一覧

ジャンル 縦&横スクロールSTG
メーカー/ブランド コナミ
発売年 1992
ハード SFC, WiiVC, WiiUVC
お気に入り度(0~10) 7+
プレイ状況 Normalノーコンティニュークリア / WiiVC版

 

 

アクスレイ とは?

www.nintendo.co.jp 

コナミが1992年に発売したスーパーファミコン向けの2Dスクロールシューティングゲームです。縦スクロールステージと、横スクロールステージが交互にやってくるのが特徴的。
WiiWiiUバーチャルコンソールに移植されていましたが、今では配信が終了しています。現在(2024/03/02)、オリジナルのSFC版以外に新規に入手してプレイする方法はありません。
 

概要・ゲームシステム

 
基本的には、一般的な2Dスクロールシューティングゲームです。
全6面構成で、1,3,5面は縦スクロール・2,4,6面は横スクロールなのが特徴です。
各ステージ道中+ボスという構成になっており、ボスを倒せばステージクリアです。
 

1面「雲の惑星」 巨大浮遊岩石群の間を抜ける縦スクロール面です

2面「コロニー」 青い惑星をバックに展開する横スクロール面です

3面「都市惑星」 都市上空の要塞を進んでいく縦スクロール面です

ステージの最後には巨大なボスが待ち受けている

家庭用オリジナルタイトルではありますが、硬派でクラシックなアーケードゲームライクな構成になっています。セーブは無く、途中のステージから遊ぶことも出来ません。
残機が無くなるとコンティニュー画面に移行し、クレジットを消費してコンティニューができます(3回まで)。クレジットが無くなるとゲームオーバーです。
再プレイ時には、1面から遊ぶ必要があります。
引き継がれるのは己の経験だけなので、ノーコンティニューでクリアを目指したり、ハイスコアを目指すのが基本の遊び方となるでしょう。
 
自機の兵装は、メインウェポンであるショットと、サブウェポンであるミサイルの2種。それぞれショットボタンと、ミサイルボタンを押すことで発射できます。どちらもオート連射です。
 
自機には、3つの強化武装(POD/SIDE/BAY)が搭載されており、ステージ中で好きなタイミングで切り替えることができます。(LRボタンを押すと切り替わる) 

  • POD: ショットがレーザーへと強化される武装
  • SIDE: ショットが特殊なバルカンへと強化される武装
  • BAY: ミサイルが強化される武装

また、POD/SIDE/BAY それぞれについて「どのように強化するか」の選択肢が用意されています。これは、各ステージ開始時に選択することができます。ステージが進むごとに、選択肢の数は増えていきます。

強化武装の選択肢が全て揃った状態

なお、強化武装装備中に被弾すると、その強化武装が壊れる代わりにミスを免れることができます。強化武装はシールドの役割も果たしているということですね。ちなみに、地形や敵に接触すると即ミスなので注意する必要があります。
 
強化武装がシールドになるおかげで、残機1つあたり最大3回まで被弾が許容されることになり、ミスへの許容度の高いゲームバランスになっています。スコアエクステンドで、残機がどんどん増えるのもあり、クリアまでに20回以上は被弾が許容されます。
 
ゲームのオプションとして、操作ボタンの変更や、連射速度調整、輝度調整などが付いています。

オプション画面

オプションには難易度変更があり、「Easy」「Normal」「Hard」「VeryHard」の4段階を選ぶことができます。Hard以上は最初は隠されており、1つ下の難易度でエンディングを見ることで解禁されます。
難易度を変えると、敵の撃つ弾が増えるだけではなく、敵のアクションが変化したり、配置数も増えます。
 

良かった点

  • 重厚で硬派なハードSF的雰囲気
     
    コナミSTGは、明るくポップな作品が多い印象があります。「ツインビー」シリーズや「パロディウス」シリーズが明るいのは当たり前なのですが、硬派路線の「グラディウス」シリーズも、STG全体で見るとポップで取っつきやすいイメージの方が多いのではないでしょうか。一方で、本作はシリアスなハードSF的な雰囲気作りに力が入れられており、コナミの他作品とは異なる空気感が演出されています。
     
    ビジュアル面では、縦スクロール面の歪んだ俯瞰視点はこの空気作りに大きく貢献していると思います。特に3面の都市上空ステージでは、独特の浮遊感を生み出しており、本当に街の上を飛んでいるかのような印象を残してくれます。
    更に、敵のデザインや攻撃パターンもどこか奇妙なものが多く、深遠な世界観が背景に広がっているではないか? と想像が捗るようになっています。
     
    ビジュアル以上に雰囲気作りに大きく貢献しているのが音響面です。
    各ステージの楽曲は静謐で重厚なイントロから、ステージの展開に合わせ劇的に展開し、ステージ終盤には壮大でヒロイックな曲調へと変化します。
    また、ショットの音やシステムサウンドも、重みのあるサウンドが採用されているのも良いですね。ゲームの効果音というよりは機械の発する音というイメージを与えてくれます。
     
  • 強化武器を切り替えて進むシステムの面白さ
     
    個人的には、3つの強化武装(POD/SIDE/BAY)を切り替えて進んでいくシステムが好きでした。シーンによって有効な武装が大きく異なるので、色々な武装を試してより良いパターンを組んでいく楽しみがあります。

    時には被弾して使いたい武装が使用不可になっていることもあり、その際にはアドリブで何とかする必要があります。
    パターンとアドリブのバランスは、STGの面白さの肝。
    本作では、この強化武器切り替えのシステムによって絶妙なバランスを実現しています。
     
  • 攻略が楽しい優れた難易度曲線
     
    Normalをプレイした限りにおいて、本作の難易度曲線はかなり優れていると感じました。
    始めた頃は1面をクリアするだけで精一杯でしたが、プレイしているうちにどんどん最高到達点が伸びて行って、すんなりとクリアできました。
    初見殺しで対処法さえ見つければ安定して抜けられるシーンが多く、安定が難しい箇所も豊富な残機である程度ごり押しが効くので、同じ箇所で苦しみ続けることもなく、終始ストレスフリーで遊べました。
     

気になった点

  • ネームエントリーが無い
     
    当時のアーケードゲームには当然のように搭載されているネームエントリー要素ですが、本作には何故かありません。
    家庭用作品だから不要というのも理解できるのですが、クリア後に即座にタイトルに戻ってしまうのはやや味気ない感じがしてしまいます。
     
  • 使いどころのない一部強化武装
     
    終盤ステージで解禁できる強化武装に関しては、性能がピーキーすぎて結局一度も使用しない物もありました。
    初期から使用できる強化武装が強すぎるのもありますが、メインで使用していた強化武装が壊れた際にピーキーな物を使用しなくてはいけないデメリットが大きいのも一因です。もし、そのピーキーさが大いに生きるステージ構成になっていたら、様々な武装がより生きたのではないかと思います。
     

総評

久しぶりに真面目にレトロSTGをプレイしましたが、とても楽しかったです。

SFC実機でしか遊べないのが難点ですが、独特のダークSFな雰囲気に興味がそそられる方にはおすすめです。
 

ゲーム音楽ピックアップ

www.youtube.comyoutube musicに公式でサントラが上がっています。
どの曲も素晴らしいのでぜひ一度聴いてみてください。

個人的おすすめは、 Colony, Mothor, Burning, Cosmos です。

 

 
 

【ゲームレビュー73】リズム天国 ザ・ベスト+

レビュー一覧

ジャンル リズムゲーム
メーカー/ブランド 任天堂
発売年 2015
ハード 3DS
お気に入り度(0~10) 8+
プレイ状況 103個パーフェクト(全104ゲーム中) / 3DS

 

全パーフェクトを狙おうと思ったのですが、ファイナルリミックスがあまりにできなくて断念……

賛否ある作品らしいですが、不満点はあれどシリーズの本質的な部分に関しては良くできていて充分楽しめました。

個人的には初代とゴールド以来のプレイです。Wiiは未プレイなので、過去作との比較の文脈においては多少誤った表現があるかもしれません。
 

リズム天国 ザ・ベスト+ とは?

www.nintendo.co.jp
 

www.youtube.com

任天堂が2015年に3DS用ソフトとして発売したリズムゲームです。
パッケージ、DL版共に販売していましたが、現在はパッケージ版のみ入手可能です。

リズム天国(GBA)」「リズム天国 ゴールド(DS)」「みんなのリズム天国(Wii)」に続くシリーズ4作目で、前作までと同様につんく♂氏がプロデュースしています。

過去3作品から選ばれたリズムゲーム(+α)が収録されたベスト盤的内容になっています。
 

概要・ゲームシステム

まずはシリーズの紹介から致しましょう。

初代「リズム天国」が発売されたのは2006年。GBA向けに発売され、GBAの最後のソフトとなりました。音楽に合わせてボタンを叩くゲームでありながら、一般的な「音ゲー」とのアンチテーゼとして開発され、大きく異なるプレイフィールが特徴です。

初代の人気が後押しし、DS,Wiiで続編が発売。その集大成となる作品が本作「ザ・ベスト+」です。

ゲーム画面だけ見ても、普通の音ゲーとは一線を画しています

 

初代発売当時の2006年には既に「音ゲー(音楽ゲーム)」というジャンルが確立されており、ゲームセンターを中心に、Bemaniシリーズや太鼓の達人などがその代表格となっていました。2024年現在でも、この「音ゲー」の枠組みは健在です。
アーケードの音楽ゲームは流れてくるノーツを叩くゲーム性を採用している物が殆どです。beatmania IIDX, popn'music, Dance Dance Revolution, GUITAR FREAKS, drummania, 太鼓の達人 等々… 当時ゲームセンターで稼働していたほぼ全ての音楽ゲームはこの方式を採用していました。パカパカパッションなどノーツではなく判定ラインが動くものもありましたが、プレイフィールがそこまで異なるものではありません。
これらアーケード音楽ゲームにおいて、作品ごとの差別化は操作デバイスによって行われていました。足でプレイするDDRや、ギタドラなどは分かりやすい例でしょう。
 
一方でリズム天国シリーズは、デバイスとして特徴のない家庭用ハードでプレイします。
そのためか、ゲームシステムの部分で大きな差別化が図られています。主な差別化点は以下の2点です。

  1.  全ての曲に、全く異なるビジュアルとゲームシステムが用意されている
  2.  視覚情報より「リズム感」に頼ってボタンを叩くことを要求される

 
1. に関しては、上で紹介した動画(リズム天国 ザ・ベスト+ 紹介映像 - YouTube)を見て頂くのが早いでしょう。

リズム天国シリーズでは、ミニゲーム単位でゲームを選択してプレイします。
全てのミニゲームにはオリジナルの曲が1曲ずつ書き下ろされていて、ゲームシステムも操作も異なります。

動画の1:06以降で紹介されているミニゲームを例として挙げましょう。
「リズム脱毛」では、髭が生えてきたリズムを覚え、その通りに繰り返して毛を抜きます。くるりと曲がった髭は、長押しをする必要があります。
「ウラオモテ」は、基本的には同じリズムでボタンを叩き続けるゲームですが、掛け声のタイミングで裏と表のリズムを切り替える必要があります。
「コロコロ探検隊」も同じリズムでボタンを叩き続けるゲームですが、今度は掛け声の回数だけ違うボタンを叩き、「ゴロリン」する必要があります。更に、三連符を叩く要素もあります。
「マキネコ」は、置かれたマキをちょうどいいタイミングで割るゲームです。大きなマキは複数回叩く必要があります。

曲ごとに全く異なるプレイフィールを味わうことができるというのが、シリーズの大きな特徴であり、長所と言えるでしょう。
 
次に、2に関して。リズム天国シリーズは、一貫して「リズム感」を重視したレベルデザインになっています。
というのも、アーケードの音楽ゲームは、高密度のノーツを見切ったり、押し辛い配置を押す技術を磨く方向に難易度向上が行われる傾向があります。勿論、高いスコアを出すためにはリズムを正しく刻むことも重要ですが、全て目押しでもクリア程度はできるバランスになっています。
一方でリズム天国シリーズは、ボタンを押す間隔の密度が低く設定され、操作もシンプル。その分、リズムを難しくすることで難易度を上げています。ビジュアルがミニゲームごとに異なり、一部ゲームでは意図的に画面が遮られるなど、目押しに頼れないような工夫がされています。
「リズム難」というと、曲のリズムに合っていない理不尽な譜面を叩かされるという印象もあり、一般的な音ゲーではあまり歓迎されない傾向にあります。しかし、リズム天国シリーズでは掛け声や効果音などを適切に活用し、明確に押すタイミングが分かるような工夫を盛り込むことで、難しいながらも納得感のあるプレイフィールを実現しています。

 
さて、シリーズの紹介も済んだところで、本作「ザ・ベスト+」の紹介に移りましょう。 

「ザ・ベスト+」は、シリーズの過去3作品から選ばれたリズムゲーム70種類以上と、新作リズムゲーム30種類以上が収録されたベスト盤+αな内容の作品です。
 

基本的なゲーム進行は前作までと同様で、メインモードは多数収録されたリズムゲームを順番にクリアしていく内容です。リズムゲームを一定以上の成績でクリアすることで、次のリズムゲームが遊べるようになります。
前作までと同様、リズムゲームは4つで一つの「ワールド」を構成しています。

1つのワールドには、GBA,DS,WIi,新作の4つのリズムゲームが収録

 

一部のワールドには、「リミックスステージ」が用意されていて、そのワールドで登場した4曲が曲に合わせて入れ替わり出現するステージになっています。
ただ、「ザ・ベスト+」では、新規にメインモードに付随するストーリーが追加されました。ストーリーは謎のキャラ「デビリ」を家まで送り届けてあげる内容になっています。

 
リズムゲームは A,B,十字ボタンでプレイします。
なお、ゴールド(DS)にあった「はじく」操作は全てボタン操作に置き換えられています。複数ボタンを扱うのが難しい人向けに、タッチ操作のみで全ての操作を行う「かんたん操作」も用意されています。
過去作からの大きな変化として、リズムゲームでボタンを叩いた際、下画面にどれだけ正確なタイミングからずれていたのかを表示する機能が付きました。前後どちらにずれているかもわかるので、自身のリズム感のズレを正確に把握できるようになりました。
 
リズムゲームの成績は、前作までは「やりなおし」「平凡」「ハイレベル」の内どれかで評価されていました。本作でもそれは変わらないのですが、大きな変更点として得点が表示されるようになりました。そして、60点以上で「平凡」・80点以上で「ハイレベル」という扱いになり、評価基準が明確化されました。

基準が明確化され、評価の理不尽さが減りました

 
ミス無しでクリアすることで特典が得られる「パーフェクトキャンペーン」は本作でも健在。本作では「ノリ玉」というアイテムが貰え、これは新しいリズムゲームと交換できます。過去作でパーフェクトの特典だったサウンドテストの曲や、リズムゲームのおまけテキストは、リズムゲームプレイ時に貰える「コイン」と交換になりました。

交換可能なリズムゲームは全12種類

 

メインモード以外のシリーズ伝統の要素として、「エンドレスゲーム」があります。これは失敗しない限りエンドレスに続くリズムゲームなのですが、本作にも4つ収録されています。エンドレスゲームは、本作ではストーリー中の「門番の試練」として登場します。3種類の難易度から選択し、どれか一つでも一定点数以上を取りクリアすれば突破です。3つの難易度をすべてクリアすると、エンドレスゲームとして遊べるようになります。
 

新規要素「チャレンジトレイン」は一般的な音ゲーのコースモードに対応するモード。
課題曲を全てノルマ達成してクリアすると、「ノリ玉」が貰えます。
テンポが上がった状態でプレイさせられたり、ミス回数に制約があったり…… 本編よりも厳しい制約が課され、高難易度のやり込み要素になっています。

様々なコンセプトに沿ったコースが用意されています

 
他には、ちょっとしたすれ違い通信要素や、リズム要素のないパチンコ風ミニゲームがあります。
 

良かった点

  • シリーズの魅力溢れる高品質なリズムゲーム
     
    唯一無二のリズム感溢れるプレイフィール、賑やかで楽しいビジュアル、リズムゲーム中の驚きの演出などなど、シリーズの魅力的な点をしっかりと引き継ぎ、過去作のプレイヤーの期待にも充分応えられる品質に仕上がっています。
    過去作のリズムゲームは原作の魅力を保ちつつも丁寧にリファインされ、懐かしさと新鮮さを同時に味わえます。
    新作リズムゲームの完成度も高いので、全ての過去作を遊びつくした方にもおすすめできます。私個人としては、「パジャマズ」「ごっつぁん兄弟」「翻訳者」などがお気に入りです。
     
  • 一般的な音ゲーの良いところを積極的に取り入れている
     
    「点数ベースの評価」「押したタイミングの明示的な表示」「コースモード」などの要素は、一般的な音ゲーではよく見る要素ですが、リズム天国シリーズには今まで導入されていませんでした。
    音ゲーへのアンチテーゼの要素があるシリーズですが、良いところを取り入れていこうという姿勢は素晴らしいと思います。特に、評価基準が明白になった点を個人的に高く評価したいです。「ゴールド」では、曲ごとに評価基準が大きく異なり、理不尽に感じることもありましたからね。 
     

気になった点

  • 解禁要素の仕様
     
    本作には、「ノリ玉」と交換で入手できるリズムゲームが12個用意されています。「ノリ玉」はパーフェクトキャンペーンかチャレンジトレイン(コースモード)で入手できますが、全解禁の為にはほぼ全曲をパーフェクトし、高難易度のコースを複数クリアする必要があります。人によっては全て解禁するのは不可能に近いでしょう。
    また、解禁を要するリズムゲームがチャレンジトレイン内の課題曲として普通に出て来るのも不満でした。初プレイのリズムゲームを困難な条件でプレイさせられるのは厳しいですし、ネタバレになってしまい解禁へのモチベも低下します。
     
  • 意図が掴めないストーリー要素
     
    ストーリー要素に関しては、最後まで導入されている意図が分かりませんでした。とにかく内容が薄く、一方でテキスト量は多いのでテンポを悪化させています。登場キャラがリズムゲームに登場しないので、リズムゲームと分断されている印象が強いです。もし、新作リズムゲームやリミックスにストーリーのキャラが登場していれば大きく印象が変わったと思います。
     
  • 序盤の簡略版リズムゲーム
     
    序盤に、過去作のリズムゲームをより短く・簡単にしたバージョンのリズムゲームが複数登場します。恐らく初心者に向けた処置だとは思いますが、あまりに簡略化されすぎていて原作リズムゲームの魅力を大幅に削いでしまっている物ばかりです。その癖に、リズムゲームの名前は原作の物をそのまま踏襲しています。
    私は特に前情報なく本作をプレイしたので、多数収録されている代わりに全てのミニゲームが簡略版になっているのではないかと不安で仕方がありませんでした。全て後にオリジナル版が登場するので杞憂でしたが、簡略版であることを明示するネーミングにした方がいいと思いました。
     

総評

新旧ともに高品質なリズムゲームが揃い、充分シリーズの魅力を引き出した作品に仕上がっていると思います。個人的には期待通りのものが遊べて満足です。
過去作をプレイしているといくつか気になる点はありますが、おすすめしない理由になるほどの不満点はありません。大きな改善点もいくつかあり、先に本作をプレイすると過去作に不満を感じる可能性もありそうなので、どちらを先に遊んでもよいかと。
過去作のプレイヤーも新規プレイヤーの方も是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
 

ゲーム音楽ピックアップ

本作の新曲に絞って紹介
 

1. I'm a lady now
  つんく♂氏の娘さんが歌う、ハチハチリミックスの曲です。
  本作の中では一番印象的。
 

2. パジャマズ
  ゴールドの「恋の実験室」を彷彿とさせる曲。中盤の演出は必見です。

 

3. ごっつぁん兄弟
  本作で好きな人が多そうな新作リズムゲームつんく♂氏の歌唱です
 

4. ファイナルリミックス
  途中から過去作のメニュー曲のリミックスになるのが素敵な演出ですね。
  エンドレスゲームやチュートリアルが登場するのも驚きの演出でした。

 

【ゲームレビュー72】Bang-On Balls: Chronicles

レビュー一覧

ジャンル 3D箱庭探索アクション
メーカー/ブランド 開発: Exit Plan Games
パブリッシュ: Untold Tales,CouchPlay Interactive
発売年 2023
ハード Switch, PS4, Xbox One/X/S, Win(Steam)
お気に入り度(0~10) 9
プレイ状況 ラスボス撃破, 檻&テープ全回収, 全実績解除/ Steam版

 

 

ノリと勢いで購入した作品ですが、とんでもなく面白かったです
2023年のインディーゲームのトップを取れてもおかしくない完成度なのに、絶妙にマイナー寄りなのが本当にもったいないです

 

Bang-On Balls: Chronicles とは?

store.steampowered.com

www.youtube.com 

インディーゲーム開発会社, Exit Plan Gamesが2023年10月に正式リリースした3D箱庭探索型のアクションゲームです。

Switch, PS4, XboxOne, Xbox Series X/S, Windows(Steam) でプレイできます。

日本語は非対応ですが、そもそも文字を読む必要がほとんど無いです。
UIに表示される多少の単語さえ分かれば全く問題なく遊べます。

4人までのオンラインCoop, 画面分割による2人までのローカルCoopに対応しています。

 

概要・ゲームシステム

 
恐らくマリオ64を意識しているであろう構成の3D箱庭アクションゲームです。

登場するキャラクターがポーランドボールなのが最大の特徴です。

ja.wikipedia.org

ポーランドボールという名前はネットミームなので容易には使えなかったのか、作中では一貫して「Bang-On Balls」と表記されています。なお、過激な現代政治ネタは無いのでどなたでも安心して遊べます。どちらかというと歴史・文化ネタが多いです。

 

主人公は、Bang-On Ballの「BOB」です。BOBは映画スタジオ「Bang-On Pictures Studio」のインターン生として、4本の映画撮影に参加します。

BOB (あなたです!)

ゲームは、映画スタジオのオフィスから始まります。映画スタジオにはたくさんのNPCがいて、非常に楽しげな雰囲気。
そして、スタジオにはBOBの参加する4つの映画のセットが設営されています。

白い看板のある建物が、映画のセットです

 

それぞれのセットの奥にはテレビが設置してあり、これに飛び込むことでその映画の世界を冒険することができます。

このテレビがマリオ64の絵に相当します

折角なので映画の紹介をしましょう。映画は以下の4本。好きな映画からプレイすることができます。また、途中で攻略を放り出して他の映画をプレイしてもOKです。

  1. Viking Invasion

    北欧の武装集団「ヴァイキング」が西欧へ侵略を行っていた10世紀頃を題材としたワールド。堅牢な砦や、ローマの地下迷宮が印象的。侵略者を倒し、ヴァイキングの親玉と決闘をしよう!!
    アーリーアクセス時に最初に追加された世界なので、他のワールドに比べるとやや規模は小さめ。最初に遊ぶのにオススメかも?
     
  2. Cold Race To Space

    米国とソ連が宇宙開発競争を行っていた冷戦期を題材にしたワールド。
    両陣営のロケット打ち上げを手伝い、月に旅立とう!!
    宇宙人が一般人に擬態してその辺を歩いています。そんな無茶苦茶さが魅力です
     
  3. Kraken's Lost Coins

    大航海時代カリブの海賊を題材としたワールド。広大な海を船に乗って旅し、島々に隠された金貨を集め、伝説の怪物クラーケンを復活させよう!!
    題材となった国が非常に多く、島ごとに雰囲気が全く異なるのが良かったです。
     
  4. Time Trouble on Kaiju Island

    平安時代から世紀末の東京まで!! 様々な時代の日本を旅し、サムライと対決し、富士山の中の秘密基地からロボットに乗って出撃、怪獣を倒そう!!
    開発者、絶対日本旅行に来たでしょ!と思わせるような構成になっており、海外から見た日本の魅力が抽出されているのが面白かったです。

 

各ワールドには、上で紹介したようなメインの目標が設定してあります。
目標となる中ボスやアイテムを探してワールドを冒険し、敵と戦い、最後にボスを倒すのが攻略の流れです。要所で特殊な演出が挟まれることはありますが、基本的に言葉での説明はありません。

 

上で紹介したようなメインの目標以外に「コスメティック」「テープ」「檻」の収集要素が用意されています。

「コスメティック」は、その名の通りBOBに付けることができる装飾品です。BOBの色合いを変えるだけに留まらず、服や帽子、手に持つアイテムなども存在。一部のコスメティックには特殊な効果が付いている物もあり、探索や戦闘に役立ちます。
途方もない量が隠されているので、普通にプレイしていると全回収は困難です。
いくつ集めたかも表示されないので、恐らく全回収は想定していないのだと思います。逆に言えば、最もやり込み度の高い収集要素と言えるでしょう。

手持ちのアイテムだけで凄い量があります

「テープ」は、回収すると映画スタジオの中がどんどん豪華になっていくというお楽しみのある収集要素です。メインの収集要素となっており、全て集めきると特別なコスメティックがもらえます。

テープはマリオ64のパワースター的立ち位置ですね

「檻」の中にはBang-On Ballが幽閉されています。これを解放するのも一つの収集要素になっています。解放したBang-On Ballは、ワールドの中で最も不思議な力を放つ場所に集います。そして、全ての檻を解放すると……?

一体何が起こるのでしょうか……?

ここまで述べた3種類の収集要素をメインの目的と併せて進めていくのが基本となるでしょう。コスメティック以外は、全回収を想定しているのか、ボス撃破後に概ねの位置が分かるようになります。
 

操作はシンプルで、よく使うのはダッシュとジャンプ、ヒップドロップのみ。
敵はダッシュで体当たりして倒すか、ヒップドロップで踏みつけて攻撃します。
操作が単純で、アクションの難易度も決して高くはないので、アクションが苦手な人でも楽しめるバランスになっています。

 
ちなみに、メインのゲームモード以外にハイスコアを競うミニゲームも存在。ロビーに置いてあるアーケードゲーム筐体に飛び込むことでプレイできます。一定上の得点で特別なコスメティックがもらえます。

サッカーのミニゲーム

良かった点

  • 常軌を逸した作り込みのマップ
     
    探索アクションの要であるマップの作り込みが本当に常軌を逸しています
    ビジュアル面においては、フレーバとなるようなオブジェクトやNPCが余すところなく配置され、マップのどこを切り取っても賑やかで楽しげな印象を与えてくれます。ロケーションのバリエーションも豊かで、同じような印象の場所がずっと続くといったこともありません。単純にデザインのセンスも良く、ネオン街やゲームセンターのサイバーパンク感は本当に大好きです。

    レベルデザインの面で見ても素晴らしいです。特に、プレイヤーの攻略の導線管理が上手い印象です。例えば、重要なアイテムやボスのいる場所には大きくて目立つ建物が建っていて、直感的に何処が目的地なのか分かるようになっています。そして、目的地までの道中を埋めるようにちょっとした探索要素やシークレットが点在するように配置されています。そのため、探索をしつつ大きな目標に向かうという進行が自然とできるようになっています。
    また、探索要素は多重構成になっていて、隠された洞窟の中に更に隠し部屋が!!みたいな事もよくあります。これにより、近くにアイテムがあったとしても注意深くマップを観察する必要が生まれるので、常に緊張感を持って探索を楽しめます。
     
  • 凄まじいボリュームの探索要素
     
    気になる箇所には必ず何かしらのシークレットがあると言っても過言ではない程に、探索要素のボリュームが多く、濃密です。例として日本ワールドには、15個のフィルム、18個の檻、そして76個(!?)のコスメティックが隠されています。
     
  • シンプルな操作と、軽快な操作性
     
    操作はシンプル。難易度も低いのでどなたでも楽しめます。
    操作性もすこぶる良く、3Dゲーム故の操作のもどかしさを感じるシーンはありませんでした。
     
  • 丸くて愛らしいキャラクター
     
    本作の元ネタであるポーランドボールは、政治への皮肉などの文脈で使われることも多いです。しかし、本作においては愛らしく、表情たっぷりでよく動くコミカルなキャラクター像に終始しています。
    開発者のキャラクターへの愛情が感じられるのも本作の素敵な点です。
     
  • 複数人でも楽しく遊べる
     
    本作は、箱庭系アクションでは珍しくマルチプレイに対応しています。
    檻以外の収集要素はプレイヤー別で取らないといけないので、バラバラではなく一緒に探索をする意義は大きいです。
    私もフレンドと一緒に遊んだのですが、とても楽しくコミュニケーションしながら遊べたので良かったです。
     

気になった点

  • 無し!!
     
    特にないです。強いて言えばラスボスが少し地味なくらいでしょうか……
     

総評

とても面白い3D箱庭探索アクションです。
兎に角、マップの作り込みがとんでもないです。
 
もっと流行ってほしいです。おすすめ。
迷っている方が居ましたら、日本ワールドのプレイ動画を見てみてください。
 

ゲーム音楽ピックアップ

store.steampowered.com

1. Tokyo City Nights
 東京1999のライブ会場の曲。やはりこれが一番印象的です。

 

【ゲームレビュー71】貢がせろ!女苑ちゃん!!

レビュー一覧

ジャンル ハイスピード大喜利貢ぎシミュレーションゲーム
メーカー/ブランド ISY
発売年 2023
ハード Win(DLSite, Steam)
お気に入り度(0~10) 8
プレイ状況 全ステージクリア / Steam版

 

 

12月ごろに話題になっていた作品
とにかくネタのセンスが良くて楽しかったです

 

貢がせろ!女苑ちゃん!! とは?

 

store.steampowered.com 

東方の二次創作ゲームを多数開発しているISY氏の2023年末の新作ゲームです。

DLSite, Steamで購入可能。Windowsで遊べます。

 

概要・ゲームシステム

「貢がせろ!女苑ちゃん!!」は
疫病神である「依神女苑」ちゃんに
ひたすら物品を貢いでいくハイスピード大喜利貢ぎシミュレーションゲームです。

 

―― Steamストアページより引用

 

単語を作って「依神女苑」ちゃんにアイテムをプレゼントしていく、ちょっと変わったシミュレーションゲームです。女苑ちゃんは、「東方憑依華」に登場するキャラクターですね。

 

本作は、おまけステージも含めて計18個のステージで構成。

各ステージでは、いくつかの問題が出題され、それに答えていきます。
 

各問題は、女苑ちゃんの要望と、穴あきの単語のペアで構成されています。

穴あきの個所に入れる文字を選び、単語を構成すると、主人公がそのアイテムを買ってきて女苑ちゃんにプレゼントします。

「ふ○」 に当てはまる2文字の単語を考えて入力!

入力した単語のアイテムが女苑ちゃんにプレゼントされます

もちろん、正解は一つではありません。
どんな物をプレゼントしたかで、リアクションも変わってきます。

頭をひねって、喜んでくれそうなプレゼントを考えましょう!!

「ふた」

「ふな」

 

 

「ふん」

プレゼントのセンスが悪いと受け取ってもらえないことも…

  
画面右端の「ごきげんメ~タ~」はプレゼントの嬉しさで上下し、全問題が終わった時に合格ラインを超えていればステージクリアとなります。

 

ただし、主人公君にも予算があります。
予算を超えてプレゼントを購入してしまうと破産。ゲームオーバーです。
ただし、アイテムの価格は入力してみるまで分からないので、モノの値段をどれだけ知っているかも問われるかも(?)

 

また、入力には制限時間があり、結構忙しいです。
時間切れになってしまうと、女苑ちゃんは帰ってしまいます。
これが、「ハイスピード大喜利貢ぎシミュレーションゲーム」たる所以ですね。
 

とまぁ、ここまで説明したゲームシステムでずっと遊ぶゲームです。

そういう貢ぎゲームだから!

ただ、各ステージには、それぞれ異なるテーマが設定されていて、お題の傾向が大きく異なります。そのため、ずっと単調なゲームプレイというわけではありません。

  
序盤こそ、お金が少なかったり時間が短かったり…… といった感じのちょっとしたテーマ性ですが、後半になる程におふざけが加速していって、エクストラステージではネタに振り切ったお題の数々が登場します。

 

原作者も登場!

 
ボリュームは普通に遊んで2時間程度。
「受け取り拒否されずにクリア」「ごきげんメーターをMAXにする」といったやり込み要素を含めると、更に2~3時間程度はかかると思います。

東方の二次創作ですが、ほぼ原作知識は要求されません。
 

良かった点

  • 単語を考えるワクワクと、入力に対する丁寧なリアクション
     
    単語の自由入力系のゲームにはロマンがありますよね。
    有名なものだと、DSの「ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート」等が挙げられるでしょうか。これは、単語を入力してアイテムを出し、パズルを解いていく作品です。
     
    単語の自由入力システムは、想像力を巡らせる範囲をゲームの画面の中だけではなく、現実世界の常識の領域まで広げるシステムです。そのため、想像力が広い世界に解き放たれたようなワクワク感があります。
     
    想像力を巡らせ、試す行為を繰り返す試行錯誤の過程は、ゲームの根本的な面白さのひとつ。試行錯誤できる範囲が広い作品は「自由度が高い」と言われ、良いこととされています。ここで重要なのは、「試行錯誤できる範囲」です。
    これは、単に取りうる行動が多ければいいわけではありません。選択肢がたくさんあるけれど、どれを選んでも一本道のノベルゲームは自由度が高いと言えるでしょうか?
    そう、大事なのは「意味がある選択肢の数」です。意味があるというのは、選択によってゲーム側からの新鮮なリアクションがあるということを指しています。
     
    単語の自由入力システムは、「意味がある選択肢の数」を増やす点がネックになりがちです。膨大な選択肢に対し、全てに丁寧なリアクションを用意することが開発のコストの面から難しいからです。「ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート」では、この問題に圧倒的な物量でアタック。あらゆる単語に固有のグラフィックや挙動を用意していました。しかし、このようなパワー系の手法は小規模開発だと不可能に近いでしょう。
     
    そこで、本作「貢がせろ!女苑ちゃん!!」では、「1文字だけ入力させる」というシステムで、この問題を解決しています。もちろん、完全な自由入力と比べると自由度は下がっているのですが、プレイしてみると十分すぎるほど想像力の自由を感じられます。
    一方で、解答の幅が狭まったことで、開発側は各回答に対して丁寧に考えられたリアクションを用意できます。
     
    1文字だけ自由入力のシステムを見たとき、「その手があったか!!」とこの素晴らしいアイデアに驚愕せざるを得ませんでした。
    本作は、このアイデアをしっかりと活かし、自由入力のワクワク感と、丁寧なリアクションが良いバランスで両立された作品に仕上がっています。
     
  • センス抜群のユーモア
     
    本作の素晴らしい点は、やはりセンス抜群のユーモアにこそあると思います。
    女苑ちゃんの返答は勿論のこと、ステージの名前や、ストアページの紹介文まで。このゲームを構成しているあらゆる要素が思わず微笑んでしまうネタに溢れていて、楽しい気分にしてくれます。
     
  • 女苑ちゃんのキャラクター性
     
    本作の主役である女苑ちゃんのキャラクター性がとても良いです。
    貢ぐ、貢がれる関係という少しダークなテーマを主軸としているにも関わらず、女苑ちゃんのキャラクター性のおかげで、コミカルで嫌味の全く無い空気感になっています。
    もちろん、貢がれるという立場であるがゆえに傲慢なキャラ付けはされているのですが、言葉の節々から溢れ出す人の良さがそれを中和しているんですよね。
     
    ただ、私は東方は原作STGこそ全部遊んでいるものの、スピンオフ系は全く触っていないので女苑ちゃんの原作におけるキャラクター性については全然知らないのですが……
    ただ、雛ちゃんがあんな感じなので大分原作と違うんだろうな~と思っています
     
  • 複数人でも楽しく遊べる
     
    本作は、単語を考えることがメインなので、複数人でも楽しく遊ぶことができます。むしろ、複数人で遊んだ方が一人では思いつかない答えが出たりして面白いかもしれません。
    配信でプレイしても良いですね。
     

気になった点

  • コンプリートを目指すと少し大変
     
    本作には各ステージで「受け取り拒否されずにクリア」「ごきげんメーターをMAXにする」といったやり込み要素があり、せっかくなので取り組んでみましたが、Stage 6までプレイして力尽きました。
    これらの目標を達成するためには、各問題ごとに、どの返答がメーターが大きく増えるかを知っている必要があります。そのため、ほぼ総当たりをして調査していたのですが、これが作業感が強くて大変でした。
     

総評

自由入力ゲームのロマンを、1文字入力というシステムで形にした快作です。

女苑ちゃんの切れ味抜群のツッコミを是非一度浴びてみてはいかがでしょうか。

おすすめ。
 

ゲーム音楽ピックアップ

1. 女苑苑ロック

youtu.be
メインBGMです。
東方憑依華の「今宵は飄逸なエゴイスト」のアレンジです