| ジャンル | 青春SFアドベンチャー |
| メーカー/ブランド | 開発: Polychroma Games / 販売: Maximum Entertainment |
| 発売年 | 2024 |
| ハード | Steam, PS5 |
| お気に入り度(0~10) | 9 |
| プレイ状況 | Trueエンド到達 / Steam版 |
Steamで97%好評という凄まじい好評率をたたき出していますが、一部厳しい評価の方もいる作品です。悪い点もあるけど、良い点が飛びぬけている作品であり、個人的にはとても好きです。
ネタバレを避けて紹介していきたいと思います。
フィリピンの異国情緒あふれる切ないADV、Until Then を最後まで遊びました
— SPD (@SPD_9X2) 2025年5月3日
友情と努力、出会いと非情な現実。王道なシナリオに、SF成分が入ってくる作風
メッセージ返信の際に書いては消す演出が入っているなど、細部まで拘った情緒的演出が素晴らしい作品でした
親友のキャスの器が大きすぎて好き pic.twitter.com/XDGaYXztDz
紹介・レビュー
本作「Until Then」はフィリピンのインディーゲームスタジオ Polychroma Games が2024年にリリースしたアドベンチャーゲームです。フィリピンの街と学校を舞台にしており、ちょっと異国情緒を感じられる作風です。
基本的には横スクロール視点で進みますが、大きなマップを探索することは無く、マップ上で特定のイベントを見ると次のシーンに進む流れになっています。
横スクロール視点のアドベンチャーゲームは最近多くリリースされている印象で、「A Space for the Unbound 心に咲く花」や「Last Time I Saw You」など本作同様に非常に高い評価を受けている作品が続々リリースされています。
横スクロール視点の良い点は、やはり2Dのノベルゲーム風アドベンチャーゲームの体験をベースにしつつも動きのあるシーンや風景描写などに力を入れられる点だと思います。本作でも、その利点が存分に生かされており、横スクロールADV初プレイの私は徹底的にリアリズムを追求した繊細な演出の数々に驚き、その虜になりました。
たとえば冒頭のシーンでは、主人公が朝に学校に向かうまでのシーンが描かれます。学校を舞台にした作品では王道な始まり方ですが、普通は同級生キャラとの会話を中心に進みますよね。一方で本作は、ただ主人公がひとりで無言で登校するだけのシーンになっています。
ただ歩くだけのシーンですが、そこにはほかの道行く人々がおり、バス停に並ぶ人々や、地面に捨てられたゴミ、駅の中の広告など、雑多でリアルな街の風景が描かれます。普通の作品ではまず描かない細かな点を横スクロールの利点を生かして見事に描き切り、作品世界のリアリティラインをぐっと押し上げています。



本作は背景の細かな描写以外にも、徹底的にリアリズムを感じられる描写を多用しています。その最たる例が、本作において頻繁に登場するスマホを見るシーンで、電車の中でニュースサイトを見たり、TwitterのようなSNSを見たりします。
これらのシーンは、作中世界の背景をプレイヤーが把握するための仕掛けになっています。一般的なゲームにおいては、作中キャラがわざわざ作中世界では常識なことをプレイヤー向けに説明してくれる不自然なシーンが時折存在しますよね。本作はニュースサイトやSNSにこの役割を持たせることで、リアリティを壊さずプレイヤーに世界観を説明することに成功しています。賢い!


主人公が友人とチャットするシーンもあります。
このチャットはリアルタイムで進行し、細部までリアリズムが追求されています。
たとえば、返答しづらい質問を送ると、しばらく返信が来なかったりします。
また、主人公が文字を入力する際には、いったん打ち込んだあとに書き直したり、消して別の言葉に変えたりと、「あるある!」と感じる細やかな演出が随所に盛り込まれています。
さらに、会話の流れに合わせて主人公がリアクションを取るなど、自然でありながら手の込んだ演出も見どころです。

キャラクター同士が会話をするシーンでは3Dを生かした多彩なカメラワークで物語が展開します。以下はコンビニの前で雨が降り出すシーンです。何度も視点が変わり、アドベンチャーゲームでありながら、まるでテレビドラマのような感覚で楽しむことができます。





この細かいカメラワークの転換が、全編通してずっと続くのですから掛かっている労力は相当なものでしょう。ここまでで、本作の演出の素晴らしさが多少伝わったかなと思います。
本作の物語について触れておきましょう。本作の中心には大きなSF的なテーマがあります。シュタインズ・ゲートのような、不思議な出来事に巻き込まれていく内に日常が徐々に崩壊していく系のストーリーになっています。詳細は伏せますが、このSF的ストーリーの完成度はいまいちだと感じました。実際、Steamのレビューにおいて不評を付けているユーザの多くはこの点について不満を漏らしています。
先述の通り、本作は日常の些細な描写をリアリズムたっぷりに描くのが魅力の作品ですので、後半になるほど日常を感じさせるシーンが減ってしまうのが良くないと感じる原因だと思います。SF的ストーリーにそれ以上の魅力があればよかったのですが、説明不足な点も多く意味不明なままに終わってしまった印象です。

最初は良いスパイスですが、終盤に差し掛かりウェイトが大きくなると微妙な感じに
しかし、本作の物語はメインとなるSFストーリーのほかにも様々な小さなテーマを多数含んでいます。夢・家族・友情・恋や過去のトラウマなど... 王道でありながら様々なテーマがちりばめられ、丁寧に現実的に描かれます。
私は、テーマがたくさんあるというのが本作の物語の最もいい点だと思いました。
たとえば、主人公がピアノの発表会に向けて猛練習するシーンがあるのですが、その中には友人や恋人とのやりとりがあり、そして主人公の家族や過去とも大きく関与してきます。

人生というのは一つのテーマで括れるものではなく、いろいろなことが同居し、絡み合って進んでいくものです。本作では、様々なテーマが主人公の人生に占めるバランスが凄くリアリティをもって繊細に描かれていて、それが心情表現やセリフに大きな説得力を与えています。
大きなシナリオよりも、心に染み渡る一つ一つのエピソードを楽しむつもりでプレイすれば、本作はとても素敵な体験を与えてくれると思います。
特に、中盤に小さなテーマが少しずつ終結するあたりの展開は最高でした。


ちなみに、本作には各所でミニゲームが登場します。線を引いて絵を描くだけのの簡単なものから、道端やお祭りの屋台をゲームにしたゲーム性の高いものまであります。
とにかくたくさんあり、ちょっとした気分転換になっています。


Until Then を遊ぶには?
Steamでプレイできます。
コントローラーでもキーボードでも遊べます。
日本語訳は高品質で、プレイするにあたって特に問題は感じませんでした。
まとめ
主人公と友人たちの青春が凄まじいリアリティで描かれ、フィリピンで暮らす別の人生を体感しているような感覚に浸れる作品です。
シナリオの終盤の展開には賛否ありますが、全編を通して非常にリッチな作品で細部まで手の込んだコンテンツがぎっしり詰まった作品なので、とりあえずACT1だけでもやってみて欲しいです。
ゲーム音楽ピックアップ
公式からサントラがアップロードされています。
全編を通して素晴らしい完成度だと思いますが、一つの曲が良いというよりは様々な小テーマが繰り返し使われるタイプの音作りです。
プレイ後に通しで聞いてみるといいかもしれませんね。