ジャンル | ビジュアルノベル |
メーカー/ブランド | Novectacle |
発売年 | 2012 |
ハード | PC(3DS/PS4/PSV/Switch/Steam) |
お気に入り度(0~10) | 7 |
プレイ状況 | 1周 & 舞台裏 & プロローグ回収(2周目&Bad回収はしていない)/Steam版 |
プレイを終えたので感想を。
ファタモルガーナの館
— SPD (@SPD_9X2) 2021年8月22日
住むものは不幸になるという館に暮らす人々の話をオムニバス形式で巡るインディーのノベルゲーム
緻密に張り巡らされた伏線、ミスリードを誘う巧妙な構成等とても丁寧に作られた作品ですが、陰鬱な展開がひたすら続くので中々つらい作品でした
終盤の怒涛の展開は良かったです pic.twitter.com/Sr3Tq5fI1X
客観的にみると、良く練られた構成、怒涛の複線回収など完成度のかなり高い作品であるといえると思います。ただ個人的には少し合わなかったところもあるかもしれません。
ネタバレ厳禁系の作品であるため、意図的に隠してあるだろう情報には触れずに書いていきます。
ファタモルガーナの館とは?
同人サークル Novectacle が2012年に発表したビジュアルノベルです。現在では多機種で発売されており、外伝作品なども出ています。今回は、Steam版をプレイしました。
今から遊ぶ場合、追加要素等が最初からすべて(?)入っているらしいPS4/PSV/Switch版などのコンシューマー移植が良いと思います。
Switch版はMetacriticでのスコアが一時100点になっていた事でも話題になりました。
誰でも楽しめるような作風になっていて、女性ファンも多いようです(そっちの方が多いのかもしれません)。
「あなた」は気づけば、古ぼけた屋敷にいた。
目の前には、「あなた」を旦那さまと慕う、翡翠の目をした女中がいる。
しかし「あなた」には記憶がなく、自分が何者なのか分からない。
生きているのかさえも。
そんな「あなた」に、女中は屋敷で起きた数々の悲劇を見せるという。
そこに、「あなた」の痕跡があるかもしれない……。最初の扉は1603年。
豊かな薔薇が咲き誇る、美しい時代に、仲睦まじいローズ兄妹がいた。
彼らには一切の不安も、不幸の陰りもないように見えたのだが……。二番目の扉は1707年。
その時代、屋敷は荒廃していた。その屋敷に住み着いた獣は、平穏な世界を望むものの
やがて獣本来の暴力性を抑えられなくなり、虐殺に走ることとなる。三番目の扉は1869年。
この時代、文明の発達により人々は急いた生活を送っていた。
鉄道事業に身を乗り出す資産家の青年は、
金と権力を追うあまり自分の妻をないがしろにしていく。四番目の扉は1099年。
女中はこれが最後の扉だと告げる。
その時代にいるのは、自らを「呪われている」と告げる青年と、
魔女の烙印を押された白い髪の娘≪ジゼル≫だった。「あなた」は時代と場所を超えた四つの悲劇を目撃する。
これらを物語として終えてしまうのか、あるいはその先を求めるのかは……
「あなた」次第だ。しかし、どこかの誰かはこう言うだろう。
「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」
-- Steamストアページより引用
概要
ゲームとしては、シンプルなノベルゲームとなっています。少し珍しい要素として、選択肢を選ぶ際に、何も選ばずに一定時間待ったり、逆に迷わずにすぐに押すことによって分岐するシステムを搭載しています。
目を覚ますと記憶を失い見知らぬ館にいた『あなた』がそこにいた女中に導かれ、記憶を取り戻すために館の過去の話の扉を開いていく……というシナリオになっていて、実際には各話を女中の語りと共に見ていくオムニバス形式になっています。
時代が数百年単位で全く異なる4つの話の扉には、女中と白い髪の娘という二人の登場人物が必ず現れます。そして、館に住む者たちは必ず不幸な運命を辿ります。
謎の二人の登場人物たちはいったいどういった存在なのか、なぜ館に住む人々は不幸な運命を辿るのか、そして『あなた』はいったい誰なのか。
このあたりが大きな謎としてストーリーが進行していきます。
良い点
- 丁寧に作られたシナリオ構成
シナリオはかなり秀逸です。伏線、ミスリードをうまく仕込み後半に一気に動かす構成には感心せざるを得ませんでした。ちょっとした違和を感じさせておき、あとでぐっさりと刺す。そんな感じでストーリーが進んでいきます。
(ゲーム全体における)後半には怒涛の展開が待っています。そこに関してはかなり面白かったです。 - オムニバス形式であること
各扉の話では、先述した二人を除いた登場人物、そして雰囲気がガラッと変わります。結局どの話も悲劇的エンドを迎えるのですが、章によっては雰囲気が合わなくても別の話を好きになれることがあるかもしれません。個人的には3番目の扉が好きです。 - 多視点で描かれるストーリー
別の人物の視点で物語を語り直す展開がかなり多くあります。これによって、以前は何でもなかった出来事が新たな意味を持つようになったりなど、物語に深みが出ます。多視点で同じ物語を描くこと自体が、シナリオが練りこまれている証拠である、と言うこともできそうです。 -
独特の雰囲気
好き嫌いが分かれそうではありますが、他の作品ではあまり見られない独特な雰囲気を全編通して放っています。グラフィック、音楽にも力が入っていて本作の独特の世界観を見事に表現しています。 - 色々ぶち壊す「舞台裏」
クリアした人向けにおまけ要素として「舞台裏」という要素が入っています。内容は作中キャラクターが制作秘話等メタな話をゆるくぶっちゃけるといった感じです。余韻もクソもないので人によっては読まない方が良かった……となるかもしれません。個人的には、内容もなかなか面白く、陰鬱な雰囲気を吹き飛ばしてくれるので嬉しい要素でした。
悪い点
- 陰鬱な雰囲気が続く点
この作品の陰鬱な雰囲気は独特でよいのですが、ほぼ全編をわたって続くので精神が削られます。時々ある明るめのパートも後々の精神的ショックを増幅させるためにあるようなものなので、物語がどんどん悪い方向に向かっていくと「またか…」みたいな気持ちになりました。一切の救いもない徹底的に酷い話として書かれたシナリオを読むのは後半の怒涛の展開のためとはいえ辛かったです。 - やや冗長な点
話が本格的に動き出す前はどの扉の話もあまり面白くありません。また、別視点で結末を知っているシナリオを何度も読むことになるので、新しい発見があるにしてもやや冗長に感じました。 - ある扉の話が刺さらないときつい
メインとなる扉の話があるのですが、その話は他の扉に比べると展開が単純で、キャラクターもあまり好きになれませんでした。その扉の話がメインとなり最後までシナリオの核を引っ張っていくので、好きになれないときついかもです。 - スキップの仕様
既読文章のみスキップの機能が(確認した限り)ありません。欲しい場面はあまり無いのですが、読んでない場所をすっ飛ばしてしまったことがあったので欲しいな…と思いました。それ以外にUIの不満は特にありませんでした。
総評
良く練りこまれた完成度の高いビジュアルノベルであるといえるでしょう。個人的には合いませんでしたが、それでもそこそこは楽しめる作品でした。ずっと続く陰鬱な雰囲気に耐えられる、むしろ好物だといえるような方にはとてもおすすめできると思います。
ゲーム音楽ピックアップ
- Giselle
終盤のある場面で流れる曲です。 - Ciao Carina
3番目の扉のメインテーマ(?)です。作中で一番軽快な曲だと思います。