| ジャンル | ウォーキングシミュレーター |
| メーカー/ブランド | Tensori |
| 発売年 | 2024 |
| ハード | Steam(Win) |
| お気に入り度(0~10) | 7+ |
| プレイ状況 | Ending到達 / Steam版 |
Backroomsという概念が登場してから数年。
一枚の写真にSCP的なホラー創作が加わった「Backrooms」はインターネットを代表する一大コンテンツに成長し、Steamでも多数のBackroomsを題材とした作品がリリースされるようになりました。
ja.wikipedia.org本作はそういった流れの中にある作品ですが、他の作品とは違った特徴で話題になりました。では、ネタバレを避けて紹介していきたいと思います。
Pools クリア!
— SPD (@SPD_9X2) 2024年5月7日
Liminal Space感溢れるプールを舞台にしたウォーキングシム
敵も居なければジャンプスケアも無し。しかし、音と雰囲気、そして暗闇と水の持つ不気味さだけでしっかりと怖い作品に仕上がっているのが凄い
とにかくビジュアルと音の雰囲気が良く、ロケーションも豊富で楽しかった! pic.twitter.com/OlaLLsZKAB
紹介・レビュー
インディーゲーム開発者(チーム?) Tensori が開発・販売しているウォーキングシミュレーターです。ウォーキングシミュレーターとは、3D空間を歩き回ること自体を楽しむことを核に置いたゲームジャンルの事です。
先述した通り、本作はBackroomsのミームを元にした作品です。本作で題材となっている屋内のプールも、Backroomsの有名なレベル(階層)のひとつです。
Backroomsを題材としたゲームは最近はかなりの数リリースされています。中でも有名なものだと、Inside the Backrooms や Escape the Backrooms が挙げられるでしょう。
これらのBackroomsゲームは、アイテム探し要素や謎解き、エンティティ(敵)から逃げる要素などがありました。しかし、本作「POOLS」には一切そういった要素がありません。
「一切、謎解きや敵から逃げる要素が無い。」
一見すると欠点にも思えるこの点こそ、本作の最大の特徴であり、本作を他のBackroomsゲームから一線を画す作品たらしめている点です。
結論から言ってしまうと、本作「POOLS」はLiminal Spaceの魅力を最大限に引き出すため、このような仕様にしているのだと思います。
これを理解するには、Liminal Spaceに関する知識が必要です。Liminal SpaceはBackroomsと同時期に確立された概念です。
Liminal Spaceとは、不自然に人がいない、実用感が無い、単調に同じ風景が続くなどの特徴がある空間の事で、不気味さ、空虚感、超現実感などを感じさせる点が特徴です。今ではインターネット上で広く使われる用語になり、SNS上にはLiminal Spaceを感じさせる写真を投稿するアカウントが存在するなど、愛好者を多く抱えるコンテンツになっています。
一方でBackroomsはLiminal Spaceの持つ魅力をベースにはしていますが、SCP的なSFホラー創作が多数盛り込む点が大きく異なります。「Backrooms」という世界が存在し、その世界は多くの階層(レベル)に分かれているという設定の上で、各ユーザがオリジナルの階層を創作しています。
階層で起こるイベントや、徘徊するエンティティ(敵)、生き残るために注意すべき点などの設定を付けて一つの作品として仕上げ、作品は各言語圏で作成されているBackrooms wikiにアップロードされます。
そして、コミュニティ全体で「Backrooms」という一つの世界を作り上げています。
Backroomsはwiki上で行われているテキストベースの創作なので、エンティティの存在は想像力を働かせ、世界をより超現実的・魅力的にする効果をもたらしています。
Inside the Backrooms や Escape the Backroomsで導入されている、敵から逃げる要素はBackroomsミームを比較的忠実に再現したものなので、違和感なく受け入れられていました。また、敵から逃げ隠れしつつ謎解きを進めていくゲームシステムも、ホラーゲームでは一般的なので、こちらも違和感なく受け入れられていました。
私もこれらの作品を楽しく遊ばせていただきました。
両作ともゲームとしての完成度は高く、舞台となる3D空間の雰囲気はよくできています。しかし、振り返ってみるとLiminal Space的魅力はあまり感じなかったなぁというのが正直な感想です。
私は、謎解きや敵の存在が、舞台となっている空間を否応にも「ゲームの世界」にしてしまうのが最大の理由ではないかと考察しています。
まず、謎解きに関しては分かりやすいですね。謎解き要素を入れると、Liminal Spaceの魅力である、空間の持つ不自然さ、無意味さが失われてしまいます。
配置されている各オブジェクトが「謎解きゲームのためのもの」という意味付けを与えられてしまうと、それ以上の深みを失ってしまいます。その物体の置かれている背景・背後にある深淵に想像を働かせ、その途方も無さに恐怖する体験が得られなくなってしまうわけですね。
また、敵に関しても「襲ってくる」という点がLiminal Spaceの魅力を削いでしまっていると思います。Liminal Spaceの持つ魅力は、空間の持つ不気味さが引き起こす微かな不安感・将来起こるかもしれない危険に対する警戒心です。一方で、敵が襲ってくる恐怖は大きく、即時的なものです。そのため、敵が襲ってくる環境下においては、Liminal Spaceの与えてくる不安感は小さく、取るに足らないものになってしまいます。
敵対存在の要素は、テキストベースで行われるBackroomsの創作においては、実際に読者が襲われることが無いため、良いフレーバーとなっていましたが、ゲーム化にあたってはむしろ魅力を削いでいる側面も大きいと私は考えています。
「POOLS」の話に戻りましょう。
「POOLS」では、謎解きと敵を一切排除し、ただ歩くだけのシンプルなウォーキングシミュレーターになっています。この2点を開発側も強調しているので、上で述べたような従来のBackroomsゲームに対する問題意識があり、その上で開発されたのだと私は考察しています。
本作は、起動すると以下のようなステージ選択画面に移ります。VHSの映像を順番に見ていくという設定で、最初は #1 しか選択できませんが、クリアすると次のステージが選べるようになります。

ステージを選択すると、プールの世界に放り出されます。後は宛も無くプールの世界を彷徨うだけです。









各ステージには終点が設定されており、そこに到達するとステージクリアとなります。
全編を通し、ビジュアルとサウンドの作る世界表現に全力が尽くされており、不気味で神秘的なLiminal Spaceの魅力を存分に味わうことができます。
一方で、全編を通してただ歩くだけのゲームなので大きなイベントもありません。そのため、通しでプレイするとやや単調に感じるかも。1日1ステージのように細かく分けてプレイするのがおすすめです。
収集要素なども特にありませんが、ステージの各所には恐ろしい音が聞こえてくる場所などが用意されており、それらは実績にもなっています。
POOLS を遊ぶには?
現在(2024/05/19)、Steam/itch.ioでwindows版のみが販売されています。
価格は1250円です。
Demo版も配信されているので、気になった方はお試しで遊んでみるのもいいかもしれません。
まとめ
Liminal Spaceの深淵を覗く不安で超現実的な魅力を満喫できる作品です。
サウンド・ビジュアルの双方で世界観の作り込みが徹底され、究極の雰囲気ゲーと呼べる完成度に達していると思います。
ゲームプレイ自体は単調であり、ゲームとして面白いかと言われると否ではありますが、Liminal Spaceの魅力を引き出すための必用な犠牲と考えれば仕方ないとも考えられると思います。
既存のBackroomsゲームの雰囲気に多少の不満を感じていた方、Liminal Spaceが好きな方は是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
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