【ゲームレビュー70】未解決事件は終わらせないといけないから

レビュー一覧

ジャンル 短編推理ADV
メーカー/ブランド Somi
発売年 2024
ハード Steam(Win/Mac)
お気に入り度(0~10) 8
プレイ状況 全実績解除 / Steam版

 

 

インディーゲーム好きの方々の間でかなり話題になっていた作品です。

圧倒的に好評の評価も納得の完成度でした。

私個人としては、Somiさんの作品はReplica以来のプレイですね。

重大なネタバレは避けて紹介します。

 

未解決事件は終わらせないといけないから とは?

store.steampowered.com 

Replica, Legal Dungeon, The Wake: Mourning Father, Mourning Mother など、インタラクティブアドベンチャーゲームを多数開発している韓国のインディーゲーム開発者Somi氏が2024年1月にリリースした新作です。

SteamでWin/Mac版が販売中です。とても高品質な日本語あり。

 

概要・ゲームシステム

#未解決事件は終わらせないといけないから

2012年2月5日、公園で遊んでいた少女・犀華が行方不明になったという通報があった。 警察は聞き込みと捜索を繰り返すが、事件は解決せずに未解決事件の書類ファイルに眠る。  

清崎蒼警部の退職から12年後、ある日訪ねてきた若い警官。 彼女は清崎が解決できなかった「犀華ちゃん行方不明事件」を終わらせるよう協力を要請してきた。

清崎はバラバラになった記憶のかけらを思い出して再構成するが、明らかとなったのは犀華の周りの全員が嘘つきだったということだけ。

 

―― Steamストアページより引用

 

本作は、ちょっと特殊なゲームシステムのアドベンチャーゲームです。

基本的には文字を読むゲームなのですが、ビジュアルノベルでは無く、ポイント&クリックで物語を構成する文章自体を並び変えていくゲームです。

 

さて、物語は一人の警官が未解決事件を終わらせるため、「清崎 蒼」 元警部の元を訪ねてくるところから始まります。彼女の記憶は混濁していて、事件の記憶は曖昧。警官のことを犀華ちゃんの亡霊だと思い込む程です。

 

清崎 蒼は警官との会話をきっかけにして、少しずつ事件の事を思い出していきます。

そして、思い出した記憶は「証言」という形でプレイヤーに与えられます。

この証言を使って事件の真相を推理していくのが、本作のメインパートです。

清崎が最初に思い出した証言

まず、証言の中には「キーワード」が含まれていることがあり、そこから連鎖的に新たな証言を思い出すことができます。

#公園 というキーワードから新たな証言を思い出す

得られる多数の証言は、時系列や発言者がぐちゃぐちゃになっています。

誰が発言したか、どの順で発言したかを推理し、適切に並び替えて整理をしていきましょう。適切に並び替えられると、「鍵」が入手でき、さらに新しい証言を得ることができます。クイズに答えないと入手できない証言もあり、推理力も試されます。

 

多数の証言を集め、繋ぎ合わせ、事件の真相に迫っていきましょう。

 

良かった点

  • 静かに、それでいて強烈に演出されるサスペンス感
     
    本作が絶賛される理由は、やはりサスペンスというジャンルの魅力を最大限発揮できているからだと思います。
    誘拐事件という題材由来の不気味さ、証言の中に含まれる不可解な発言の放つ不気味さでプレイヤーを引き付け、疑問の解決と新たな疑問の提示を繰り返し最後まで高い緊張感を保つ。本作は、サスペンスの王道の面白さを高い水準で提供してくれます。
     
    本作のストーリーは後から事件を追うという形式です。普通ならば、リアルタイムに物語を綴る形式と比べると、どうしても緊張感が落ちてしまうはず。
    しかし、本作では登場人物の言葉で物語を綴るという発明により、事件当初の緊迫感が生々しく感じられるようになっています。
     
  • ダークで質素なビジュアルと、BGMが増幅する緊張感
     
    本作のダークなビジュアル・BGMも、プレイ中の緊張感の向上に一役買っています。
    特に、BGMにはゲームが進行する度に音が増えていく仕掛けがあります。
    終盤に近付くほど焦燥感が増していき、真相に段々と近づいていることを感じさせる演出になっています。
     
  • 推理ゲームとしての面白さ・バランスの良さ
     
    世の中には、推理ゲームを名乗っていながら、実際には殆ど推理要素が無いゲームも多数存在します。しかし本作は、しっかりと推理をさせてくれます。

    誰が発言したのか、どの順で発言したのか……
    プレイヤー自身が推理し、並び替え、情報を整理していくゲームシステムがこれを実現しています。
     
    正しく証言を並び替えると正解であることを教えてくれるので、袋小路にハマり、詰まってしまうことは無いです。
    しかし、証言自体の数があまりに多いので、何も考えないで解けるほど甘くはありません。
    総じてバランスが良い難易度に収まっていて、誰もが推理を楽しめる構成になっていると思います。
     

気になった点

  • ゲームシステムや操作の説明が不足している
     
    本作は全体的に、ゲームシステムや操作の説明が不十分に感じました。
    そのため、最初は何をすれば良いのかが分からず困惑しました。
    他には、便利機能に気が付かなかったので、面倒なキーワード探し作業を毎回気合で行っていました。
    この説明不足さも、不可解さを増幅させる演出の一環なのかもしれません
     
    これからプレイをする方は、右下のUIに注目しつつ遊ぶと良いと思います。
     

総評

サスペンス+推理ゲームとしての完成度の高い作品でした。
気になった方は、ぜひプレイしてみてください。
 
エンディングには、作者の思いの詰まったメッセージが書かれています。
是非プレイ後には、それぞれのキャラクター達の「嘘」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
 

ゲーム音楽ピックアップ

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  1. Ending (A Secret for You)

    エンディングです。感傷的でありながら、力強い。
    本作の終わりにぴったりの良い曲です。