【ゲームレビュー73】リズム天国 ザ・ベスト+

レビュー一覧

ジャンル リズムゲーム
メーカー/ブランド 任天堂
発売年 2015
ハード 3DS
お気に入り度(0~10) 8+
プレイ状況 103個パーフェクト(全104ゲーム中) / 3DS

 

全パーフェクトを狙おうと思ったのですが、ファイナルリミックスがあまりにできなくて断念……

賛否ある作品らしいですが、不満点はあれどシリーズの本質的な部分に関しては良くできていて充分楽しめました。

個人的には初代とゴールド以来のプレイです。Wiiは未プレイなので、過去作との比較の文脈においては多少誤った表現があるかもしれません。
 

リズム天国 ザ・ベスト+ とは?

www.nintendo.co.jp
 

www.youtube.com

任天堂が2015年に3DS用ソフトとして発売したリズムゲームです。
パッケージ、DL版共に販売していましたが、現在はパッケージ版のみ入手可能です。

リズム天国(GBA)」「リズム天国 ゴールド(DS)」「みんなのリズム天国(Wii)」に続くシリーズ4作目で、前作までと同様につんく♂氏がプロデュースしています。

過去3作品から選ばれたリズムゲーム(+α)が収録されたベスト盤的内容になっています。
 

概要・ゲームシステム

まずはシリーズの紹介から致しましょう。

初代「リズム天国」が発売されたのは2006年。GBA向けに発売され、GBAの最後のソフトとなりました。音楽に合わせてボタンを叩くゲームでありながら、一般的な「音ゲー」とのアンチテーゼとして開発され、大きく異なるプレイフィールが特徴です。

初代の人気が後押しし、DS,Wiiで続編が発売。その集大成となる作品が本作「ザ・ベスト+」です。

ゲーム画面だけ見ても、普通の音ゲーとは一線を画しています

 

初代発売当時の2006年には既に「音ゲー(音楽ゲーム)」というジャンルが確立されており、ゲームセンターを中心に、Bemaniシリーズや太鼓の達人などがその代表格となっていました。2024年現在でも、この「音ゲー」の枠組みは健在です。
アーケードの音楽ゲームは流れてくるノーツを叩くゲーム性を採用している物が殆どです。beatmania IIDX, popn'music, Dance Dance Revolution, GUITAR FREAKS, drummania, 太鼓の達人 等々… 当時ゲームセンターで稼働していたほぼ全ての音楽ゲームはこの方式を採用していました。パカパカパッションなどノーツではなく判定ラインが動くものもありましたが、プレイフィールがそこまで異なるものではありません。
これらアーケード音楽ゲームにおいて、作品ごとの差別化は操作デバイスによって行われていました。足でプレイするDDRや、ギタドラなどは分かりやすい例でしょう。
 
一方でリズム天国シリーズは、デバイスとして特徴のない家庭用ハードでプレイします。
そのためか、ゲームシステムの部分で大きな差別化が図られています。主な差別化点は以下の2点です。

  1.  全ての曲に、全く異なるビジュアルとゲームシステムが用意されている
  2.  視覚情報より「リズム感」に頼ってボタンを叩くことを要求される

 
1. に関しては、上で紹介した動画(リズム天国 ザ・ベスト+ 紹介映像 - YouTube)を見て頂くのが早いでしょう。

リズム天国シリーズでは、ミニゲーム単位でゲームを選択してプレイします。
全てのミニゲームにはオリジナルの曲が1曲ずつ書き下ろされていて、ゲームシステムも操作も異なります。

動画の1:06以降で紹介されているミニゲームを例として挙げましょう。
「リズム脱毛」では、髭が生えてきたリズムを覚え、その通りに繰り返して毛を抜きます。くるりと曲がった髭は、長押しをする必要があります。
「ウラオモテ」は、基本的には同じリズムでボタンを叩き続けるゲームですが、掛け声のタイミングで裏と表のリズムを切り替える必要があります。
「コロコロ探検隊」も同じリズムでボタンを叩き続けるゲームですが、今度は掛け声の回数だけ違うボタンを叩き、「ゴロリン」する必要があります。更に、三連符を叩く要素もあります。
「マキネコ」は、置かれたマキをちょうどいいタイミングで割るゲームです。大きなマキは複数回叩く必要があります。

曲ごとに全く異なるプレイフィールを味わうことができるというのが、シリーズの大きな特徴であり、長所と言えるでしょう。
 
次に、2に関して。リズム天国シリーズは、一貫して「リズム感」を重視したレベルデザインになっています。
というのも、アーケードの音楽ゲームは、高密度のノーツを見切ったり、押し辛い配置を押す技術を磨く方向に難易度向上が行われる傾向があります。勿論、高いスコアを出すためにはリズムを正しく刻むことも重要ですが、全て目押しでもクリア程度はできるバランスになっています。
一方でリズム天国シリーズは、ボタンを押す間隔の密度が低く設定され、操作もシンプル。その分、リズムを難しくすることで難易度を上げています。ビジュアルがミニゲームごとに異なり、一部ゲームでは意図的に画面が遮られるなど、目押しに頼れないような工夫がされています。
「リズム難」というと、曲のリズムに合っていない理不尽な譜面を叩かされるという印象もあり、一般的な音ゲーではあまり歓迎されない傾向にあります。しかし、リズム天国シリーズでは掛け声や効果音などを適切に活用し、明確に押すタイミングが分かるような工夫を盛り込むことで、難しいながらも納得感のあるプレイフィールを実現しています。

 
さて、シリーズの紹介も済んだところで、本作「ザ・ベスト+」の紹介に移りましょう。 

「ザ・ベスト+」は、シリーズの過去3作品から選ばれたリズムゲーム70種類以上と、新作リズムゲーム30種類以上が収録されたベスト盤+αな内容の作品です。
 

基本的なゲーム進行は前作までと同様で、メインモードは多数収録されたリズムゲームを順番にクリアしていく内容です。リズムゲームを一定以上の成績でクリアすることで、次のリズムゲームが遊べるようになります。
前作までと同様、リズムゲームは4つで一つの「ワールド」を構成しています。

1つのワールドには、GBA,DS,WIi,新作の4つのリズムゲームが収録

 

一部のワールドには、「リミックスステージ」が用意されていて、そのワールドで登場した4曲が曲に合わせて入れ替わり出現するステージになっています。
ただ、「ザ・ベスト+」では、新規にメインモードに付随するストーリーが追加されました。ストーリーは謎のキャラ「デビリ」を家まで送り届けてあげる内容になっています。

 
リズムゲームは A,B,十字ボタンでプレイします。
なお、ゴールド(DS)にあった「はじく」操作は全てボタン操作に置き換えられています。複数ボタンを扱うのが難しい人向けに、タッチ操作のみで全ての操作を行う「かんたん操作」も用意されています。
過去作からの大きな変化として、リズムゲームでボタンを叩いた際、下画面にどれだけ正確なタイミングからずれていたのかを表示する機能が付きました。前後どちらにずれているかもわかるので、自身のリズム感のズレを正確に把握できるようになりました。
 
リズムゲームの成績は、前作までは「やりなおし」「平凡」「ハイレベル」の内どれかで評価されていました。本作でもそれは変わらないのですが、大きな変更点として得点が表示されるようになりました。そして、60点以上で「平凡」・80点以上で「ハイレベル」という扱いになり、評価基準が明確化されました。

基準が明確化され、評価の理不尽さが減りました

 
ミス無しでクリアすることで特典が得られる「パーフェクトキャンペーン」は本作でも健在。本作では「ノリ玉」というアイテムが貰え、これは新しいリズムゲームと交換できます。過去作でパーフェクトの特典だったサウンドテストの曲や、リズムゲームのおまけテキストは、リズムゲームプレイ時に貰える「コイン」と交換になりました。

交換可能なリズムゲームは全12種類

 

メインモード以外のシリーズ伝統の要素として、「エンドレスゲーム」があります。これは失敗しない限りエンドレスに続くリズムゲームなのですが、本作にも4つ収録されています。エンドレスゲームは、本作ではストーリー中の「門番の試練」として登場します。3種類の難易度から選択し、どれか一つでも一定点数以上を取りクリアすれば突破です。3つの難易度をすべてクリアすると、エンドレスゲームとして遊べるようになります。
 

新規要素「チャレンジトレイン」は一般的な音ゲーのコースモードに対応するモード。
課題曲を全てノルマ達成してクリアすると、「ノリ玉」が貰えます。
テンポが上がった状態でプレイさせられたり、ミス回数に制約があったり…… 本編よりも厳しい制約が課され、高難易度のやり込み要素になっています。

様々なコンセプトに沿ったコースが用意されています

 
他には、ちょっとしたすれ違い通信要素や、リズム要素のないパチンコ風ミニゲームがあります。
 

良かった点

  • シリーズの魅力溢れる高品質なリズムゲーム
     
    唯一無二のリズム感溢れるプレイフィール、賑やかで楽しいビジュアル、リズムゲーム中の驚きの演出などなど、シリーズの魅力的な点をしっかりと引き継ぎ、過去作のプレイヤーの期待にも充分応えられる品質に仕上がっています。
    過去作のリズムゲームは原作の魅力を保ちつつも丁寧にリファインされ、懐かしさと新鮮さを同時に味わえます。
    新作リズムゲームの完成度も高いので、全ての過去作を遊びつくした方にもおすすめできます。私個人としては、「パジャマズ」「ごっつぁん兄弟」「翻訳者」などがお気に入りです。
     
  • 一般的な音ゲーの良いところを積極的に取り入れている
     
    「点数ベースの評価」「押したタイミングの明示的な表示」「コースモード」などの要素は、一般的な音ゲーではよく見る要素ですが、リズム天国シリーズには今まで導入されていませんでした。
    音ゲーへのアンチテーゼの要素があるシリーズですが、良いところを取り入れていこうという姿勢は素晴らしいと思います。特に、評価基準が明白になった点を個人的に高く評価したいです。「ゴールド」では、曲ごとに評価基準が大きく異なり、理不尽に感じることもありましたからね。 
     

気になった点

  • 解禁要素の仕様
     
    本作には、「ノリ玉」と交換で入手できるリズムゲームが12個用意されています。「ノリ玉」はパーフェクトキャンペーンかチャレンジトレイン(コースモード)で入手できますが、全解禁の為にはほぼ全曲をパーフェクトし、高難易度のコースを複数クリアする必要があります。人によっては全て解禁するのは不可能に近いでしょう。
    また、解禁を要するリズムゲームがチャレンジトレイン内の課題曲として普通に出て来るのも不満でした。初プレイのリズムゲームを困難な条件でプレイさせられるのは厳しいですし、ネタバレになってしまい解禁へのモチベも低下します。
     
  • 意図が掴めないストーリー要素
     
    ストーリー要素に関しては、最後まで導入されている意図が分かりませんでした。とにかく内容が薄く、一方でテキスト量は多いのでテンポを悪化させています。登場キャラがリズムゲームに登場しないので、リズムゲームと分断されている印象が強いです。もし、新作リズムゲームやリミックスにストーリーのキャラが登場していれば大きく印象が変わったと思います。
     
  • 序盤の簡略版リズムゲーム
     
    序盤に、過去作のリズムゲームをより短く・簡単にしたバージョンのリズムゲームが複数登場します。恐らく初心者に向けた処置だとは思いますが、あまりに簡略化されすぎていて原作リズムゲームの魅力を大幅に削いでしまっている物ばかりです。その癖に、リズムゲームの名前は原作の物をそのまま踏襲しています。
    私は特に前情報なく本作をプレイしたので、多数収録されている代わりに全てのミニゲームが簡略版になっているのではないかと不安で仕方がありませんでした。全て後にオリジナル版が登場するので杞憂でしたが、簡略版であることを明示するネーミングにした方がいいと思いました。
     

総評

新旧ともに高品質なリズムゲームが揃い、充分シリーズの魅力を引き出した作品に仕上がっていると思います。個人的には期待通りのものが遊べて満足です。
過去作をプレイしているといくつか気になる点はありますが、おすすめしない理由になるほどの不満点はありません。大きな改善点もいくつかあり、先に本作をプレイすると過去作に不満を感じる可能性もありそうなので、どちらを先に遊んでもよいかと。
過去作のプレイヤーも新規プレイヤーの方も是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
 

ゲーム音楽ピックアップ

本作の新曲に絞って紹介
 

1. I'm a lady now
  つんく♂氏の娘さんが歌う、ハチハチリミックスの曲です。
  本作の中では一番印象的。
 

2. パジャマズ
  ゴールドの「恋の実験室」を彷彿とさせる曲。中盤の演出は必見です。

 

3. ごっつぁん兄弟
  本作で好きな人が多そうな新作リズムゲームつんく♂氏の歌唱です
 

4. ファイナルリミックス
  途中から過去作のメニュー曲のリミックスになるのが素敵な演出ですね。
  エンドレスゲームやチュートリアルが登場するのも驚きの演出でした。