【ゲームレビュー19】ルートダブル -Before Crime * After Days-

レビュー一覧

ジャンル ビジュアルノベル
メーカー/ブランド 開発:レジスタ 販売:イエティ
発売年 2012(Xtend Edition:2013)
ハード 無印:X360,WinPS3 Xtend:PS3,PSV,Steam etc...
お気に入り度(0~10+) 7+
プレイ状況 グランドエンド回収/XBox360

 

 
Ever17をやりたいと思っていたのですが、先にこっちをやっておこうと思いプレイ

重大なネタバレは避けて書こうと思います

 

ルートダブル -Before Crime * After Days- とは?

www.yetigame.jp

youtu.be

イエティが2012年にXBox360で発売した、ビジュアルノベルです。公式は「 SFサスペンスADV」と銘打っています。

その後、PC版が発売され、2013年にはPS3でXtend Editionという完全版が発売されました。Xtend Editionは、シナリオのテンポアップや多少の要素追加などが施されているようですが、大筋に違いはないです。

SteamにあるXtend Editionは英語版です。購入するならコンシューマー版がオススメです。

 

 西暦2030年9月16日 午前6時19分。

「鹿鳴研究学園都市」の郊外、

湖畔にそびえ立つ、巨大な科学研究施設「ラボ」にて、

「事故」、発生……!

かくして、ラボの地下に9名の男女が閉じ込められた。

刻一刻と死が蝕んでいく世界。固く閉ざされた出口。

頻発する不可解な現象。多くの謎。

そして……閉鎖空間の中で発生した、猟奇的な大量殺人。

この超極限状態から抜け出す鍵(ルート)は2つ――

ラボの中で記憶を失ったレスキュー隊の隊長――笠鷺渡瀬。渡瀬の視点で繰り広げられる、9時間の脱出劇。

ラボに閉じ込められた高校生――天川夏彦。夏彦の視点で追想される、事故発生までの6日間の軌跡。

2人の思惑、2つの記憶が重なるとき――全ての真相が明らかになる。

果たして、9名全員が無事生還できる道は、残されているのか? 

 

――公式サイトより引用

 

ゲームシステム・概要

基本的には、一般的なビジュアルノベルです。

選択肢はなく、その代わり Senses Sympathy System というシステムでストーリーが分岐します。このシステムは、簡単に言えば登場人物の誰をどの程度支持するか(感情移入度: センシズ)を入力するシステムです。例えば、2人の人物が言い争っている時は、どちらを支持するかによってストーリーが分岐します。両方を支持することでまた別の分岐が現れたりするようなこともあります。センシズ入力は、ちょっと台詞が変化するものから、間違えると即BADになるようなものまであり、各シーンごとに重要度が表示されるようになっています。

本作は最初に、√Aと√Bを選択し好きな方からプレイできます(Aからがオススメです)。√Aは、原子力研究所(ラボ)で起こる事故に巻き込まれ、閉じ込められてしまった人々の脱出劇をレスキュー隊の隊長「笠鷺渡瀬」の視点から描きます。次々に迫りくる危機を、ギリギリのところで乗り越えていく緊張感のあるストーリー展開が特徴です。
一方、√Bは高校生「天川夏彦」の視点から、事故の起こるまでの6日間を描くストーリーです。ゆったりと流れる日常に綻びが生じ始め、だんだんと崩壊に向かって行く不穏なストーリーが特徴です。

両方のルートをクリアすると……?

 

良い点

  • 緻密に複雑に構成された完成度の高い設定・ストーリー構成
     
    本作の突出している点はこの一言に集約されると言ってもいいでしょう。膨大な設定、シナリオ上の出来事の数々を矛盾なく複雑に関連させ、そしてプレイヤーの認識をうまく誘導しつつ情報を小出しにしていくのが非常に上手いです。
    最初から最後までずっと伏線の展開と回収をとてつもないペースで繰り返す構成になっており、「あれがここで出て来るのか!」という衝撃が何度も何度も訪れます。各キャラクターの視点管理も完璧で、それぞれのキャラクターの知識や性格が行動に矛盾なくあらわれています。
    それいでいてシナリオ展開はもちろん、設定にも突っ込みどころがほとんどありません。本作には幽霊やテレパシーといったオカルトっぽい設定が複数登場しますが、それらを科学的な設定として作中でうまく定義し、シナリオで最大限活用しています。
     
  • 力の入ったバッドエンド
     
    センシズ入力時に、選択を失敗するとバットエンドに行くことがあります。他の作品ではバッドエンドは正直いらない…と思われていることも多いでしょう。しかし、本作はバッドエンドに非常に力が入っていて、正直バッド分岐に突入しているのに気が付かないこともありました。バッド分岐専用のCGや、バッドで明かされる情報などもあり、しっかりとメインコンテンツの一部になっています。
     
  • 凄まじいボリューム
     
    シナリオのボリュームはかなり多いです(30h以上?)。それでいて、終盤まで息切れせずに複線回収と新情報の提示が終わらないのが凄いです。
     

悪い点

  • やや冗長
     
    同じシーンを多視点で何度も見ることが多いので、やや冗長でテンポ悪く感じられます。
    終盤は特に顕著で、開発側もやり過ぎたと思ったのかXtend Editionではテンポを改善しているようです。
     
  • Senses Sympathy System
     
    本作の目玉であるセンシズ入力システムですが、あまり生かし切れていない感があります。最初は各キャラごとにどれくらい同意するかを考えて入力していましたが、最終的には基本的に全員MAXにしておいて分岐させたい時だけ下げる…となってしまいました。
    後述するように、本作のキャラクターにあまり感情移入しにくいのも一因かもしれません。
     
  • 雰囲気作りがあまり上手くない
     
    シナリオの構成が非常にハイレベルなのは先述しましたが、一方でテキストがあまり上手くなく、キャラクターに感情移入できる土台、すなわち感傷的になれる雰囲気の構成ができていないと個人的には感じました。土台が上手くできていないところに感動的シーンを入れようとするので、冷めたような気持ちになることもありました。
    二人の主人公のうち、夏彦は子供っぽさを出したのだと思いますが、それでも行動原理・思考がシンプル過ぎる気がしました。シナリオ中では夏彦始点が多いのに、一番何を考えているのかわからないキャラになってしまっている気がします。渡瀬はわかりやすい苦悩が描かれ、思考も大人っぽいので問題ないです。

総評

複雑に絡み合うシナリオ、緻密に構成され物語にしっかりと沁み込んでいる設定の数々、そして怒涛の複線回収が光る作品です。
私は雰囲気が微妙だと感じてしまい、いまいち作中に入り込めませんでしたが、それでも凄まじい完成度のシナリオのおかげで中々に楽しめる作品でした。雰囲気さえ合えば最高の作品になると思います。

 

ゲーム音楽ピックアップ

  1. Double Bible

    www.youtube.comオープニングです。最初は微妙な曲だと思っていましたが、聴き込むほど好きになりました。opムービーとのシンクロ具合も好きです。
     

  2. The Brave Decision
    盛り上がるシーンで流れる曲です。単体でもいい曲ですが、流れるシーン自体がアツい場合が多くイントロは特に強烈に記憶に残ります。
     

  3. Rondo Carrousel

    www.youtube.comエンディングです。
     

  4. ROUTE EXIT

    www.youtube.com

    Xtend Editionで追加された2nd OPです。いい曲ですね~聴けなかったのは残念です。