ジャンル | 倉庫番系パズル |
メーカー/ブランド | Patrick Traynor |
発売年 | 2022 |
ハード | Steam |
お気に入り度(0~10) | 9+ |
プレイ状況 | 全ステージクリア / Steam版 |
PATRICK'S PARABOX
— SPD (@SPD_9X2) 2023年2月3日
倉庫番系のパズルゲーム
押す対象となる箱が、ステージ自体を再帰的に参照していて、自由に出入りできるという基本ルールを拡張した、多彩なパズルを搭載
レベルデザインが本当に素晴らしく、パズルを解く爽快感を最大限味わえる絶妙な難易度はもはや奇跡
間違いなく超傑作です pic.twitter.com/wCiSAW3wwk
途轍もない面白さです。最初はTwitterで開発中の映像を見たのが出会いでした。
インディーゲームらしい面白いアイデアだな~と思ってチェックしていましたが、発売日に値段を見てびっくり。
見た目から800円くらいかなと想像していたのですが、実際には2000円でした。見た目のシンプルさに比べると高いと感じてしまい、しばらく買わずに放置していました
しばらく経ち、Steamの評価が圧倒的好評になっていることに気が付き、意を決して購入。海外旅行のお供に序盤をプレイしていました。
本作の真の魅力に気が付いたのは、ある程度遊んでからでした。具体的にはWorld 5くらいからですね。そこから先は少し遊びたいな~と思ったときにちょこちょこプレイし、結局100%クリアまで遊んでしまいました。
Patrick's Parabox とは?
Patrick Traynor 氏が 2022年に発売した倉庫番系のパズルゲーム。再帰構造をメインテーマに据えているのが特徴です。
現在(2023/02/07)はSteamでのみ配信されています。価格は2000円で少々高めに見えますが、クリア後には全然高くないな……という気持ちになりました。
概要・ゲームシステム
基本的なルールはいわゆる倉庫番です。ステージにはプレイヤーと、箱が幾つか置いてあります。箱を押して指定の位置に配置した後、プレイヤーをゴール位置に移動すればステージクリアです。実際、最初のいくつかのステージは、簡単で単純な倉庫番になっています。
少し進めると、本作の独自要素その1である「中に入れる箱」が登場します。この箱を壁際まで持っていき、プレイヤーをぐいと押し込むと、プレイヤーのサイズが変化してこの箱の中に入ることができます。「中に入れる箱」の中に別の箱を押し込んだり、その状態でいろいろな場所に運んだり…… この要素だけでもかなり豊富なバリエーションのパズルが用意されています。
もう少し進めると、本作最大の要素である、「ステージ自体を参照している箱」が登場します。下の画像で、赤いプレイヤーの右側にあるのがその箱です。この箱はステージそのものであり、この箱にプレイヤーが左から入ると、左端の通路の場所からプレイヤーが入ってきます。
当然、この再帰的参照のシステムにはいろいろな細かい「仕様」が存在します。例えば、「箱の端に複数の入り口がある場合、プレイヤーはどこから入ってくるのか?」「出口同士を繋げた場合、どうなってしまうのか…?」等々…
中盤以降は、これらの細かな仕様の数々をフルに活用したパズルが登場してきます。もちろん、プレイヤーが徐々に理解できるように少しずつ問われるようになっています。
新たなギミックも次々に登場します。例えば左右が反転した「ステージ自体を参照している箱」や、複数のプレイヤーが登場するステージなど……
本作のパズルは、パズルのコンセプトごとに「ワールド」という単位で区切られています。基本的には1つワールドが進むと新しいパズル要素が導入されます。( 今までパズル要素として使われていなかったものが問われるようになることも… )
各ワールドには、通常問題・高難易度問題・サイド問題の3種類の問題が用意されていて、通常問題をクリアしていくことで高難易度・サイド問題に挑めるようになります。
一定問題数を解くとワールドクリアとなり、次のワールドへ進めます。通常問題だけ遊んでいてもワールドクリア条件は満たすので、クリアだけならあまり難しくありません。
高難易度問題には、通常問題で問われたパズル要素を少し高いレベルで要求される問題が揃っています。激烈に難しい問題は少なく、1周目からどんどん遊んでいける難易度です。
サイド問題には、少し変な問題が用意されています。ワールドのコンセプトに囚われず、新しいギミックを登場させてみたり、見た目が派手な問題が出たり…… 気分転換枠のような役割を果たしています。
全てのワールドをクリアした後、おまけでチャレンジ問題が遊べるようになります。こちらはかなり高難易度で、相当のやりごたえのある内容となっています。
良かった点
- プレイヤーの事を完全に理解しているとしか思えない、完璧なレベルデザイン
本作の最も素晴らしい点は、あまりに完璧すぎるレベルデザインです。レベルデザインの教科書があったら、ぜひ載せて欲しいくらいです。
まず、良いレベルデザインと感じる作品に共通した一種のセオリーみたいなものをしっかりと守っています。例えば、パズルの要素を簡単な問題で導入し、後に難しい問題でその応用を問うという基本的な構造や、複数の要素を意外な形で融合して新鮮なステージを作る等ですね。
本作はそれに加えて、取捨選択の判断がずば抜けてよい印象です。何が楽しさに必要で、何が不要なのか、極限まで考え抜かれた努力が、プレイしていてここまで強烈に伝わってくる作品は今までになかったです。
まず、パズルゲームにありがちな「答えの方針は分かったけど、細かい調整や作業が面倒くさい」といった現象が一切起こりませんでした。多くの問題は答えを閃けばすぐにクリアできるようになっていて、作業的になってしまう箇所は意図的に省かれています。その証拠として、チャレンジ問題の中には少し作業的な面倒さを感じる問題も含まれています。恐らくチャレンジ問題は本編に登場させるには難易度が高すぎる/少し作業感が強いことが原因で省かれた問題をおまけとして収録したものなのだと思います。
また、プレイヤーが混乱しそうなギミックはサイド問題で少し登場させるだけにしているのも凄いと思いました。例えば、縦横のサイズが違う箱のギミックは使おうとすれば複雑で難しいパズルを作るのに大いに役立ったとは思いますが、サイド問題で数問登場した後には一切登場しません。ただ問題を難しくすればプレイヤーが満足できるわけではないと深く理解しているからこそ、閃きではなく面倒で細かい状況整理を要求してしまうギミックはおまけ程度の登場に抑えているのでしょう。
- 新鮮なコンセプトによってもたらされる新感覚の思考体験
本作を象徴している再帰構造のコンセプトは、ゲームを触っているだけで新鮮さを感じることができます。再帰構造をフルに活用したパズルを解いていると、脳内で今まで使ったことのない思考回路が働いているのがかなり実感できます。どんどん独特な思考法に慣れてくるのが実感できるのも面白いです。最後までプレイした後に序盤で苦しんだ問題を見返してみると、「なんでこんな簡単な問題で悩んでいたんだろう?」と不思議に思うくらいの成長を実感できます。
- パズルに最適化されたミニマルなビジュアル
本作のビジュアルは非常にシンプルになっています。そのため、小さな箱の中の様子も分かりやすくなっています。再帰構造の魅力を最大限引き出すデザインと言ってもいいかもしれません。
- Undo/Redo機能
機能に関しては、Undo/Redo機能が付いているのが有難いです。巻き戻し機能は倉庫番系パズルにはもはや必須レベルですが、ちゃんとあるので安心して下さい。
気になった点
- 複数プレイヤーが出てくる場所の動く順序
ネタバレになりそうなので詳しくは書きませんが、順序が分かりにくく、少し困りました。あまり出てこないギミックなので、そこまでは気になりませんけどね
- 外見だけだと面白さが伝わりにくい
内容とは関係ありませんが、見た目からこの作品の秘めているポテンシャルが伝わりにくいのが少し残念ですね。購入時は割と勢いで買った感があり、もしじっくり考えていたら買わない判断をしていたかもしれません。
総評
意外性のある面白いコンセプトと、パズルを最大限楽しめるように丁寧に丁寧に調整された完璧なレベルデザインが光る傑作パズルゲームです。一度ハマるとつい起動してしまう中毒性があるので、きっとすぐに最後までプレイしてしまう事でしょう。かなりオススメです。