【ゲームレビュー42】Manifold Garden

レビュー一覧

ジャンル 3D一人称パズル
メーカー/ブランド William Chyr Studio
発売年 2020
ハード PC(Steam,Epic),iOS,PS4,PS5,Switch,XBoxOne,Xbox X/S
お気に入り度(0~10) 6
プレイ状況 通常クリア(裏ルート未プレイ) / Steam版

 

 

Steamの圧倒的好評の評価につられてプレイ。ネタバレ等も存在しない作品なので、特に気にせず書いていきます。

 

Manifold Garden とは?

youtu.be

store.steampowered.com 

William Chyr Studioが2019年10月にリリースした一人称視点3Dパズルゲームです。現在(2023/03/02)はSteam,Epic版に加え、Switch,PS4&5,Xbox Series X/S など多くの機種で遊ぶことができます。内容に差はなさそうなので、好きな機種で遊べばよいと思います。

 

概要・ゲームシステム

3D空間を歩き回り、パズルを解くことで道が切り開かれ、先に進んでいくタイプの一人称視点3Dパズルゲームです。大分プレイ感は異なりますが、Portalライクと言えば間違っていないかもしれません。

本作の第一印象として目につくのは、何と言っても無機質なビジュアルでしょう。本作のマップは全編通して白い直方体を組み合わせて作られた構造物で構成されており、統一された世界観を持っています。所々で色鮮やかなオブジェクトが出てきますが、パズル面で重要な構造物だったり、大きなイベントの視覚演出のために利用されるオブジェクトだったり、そういった限定的なところだけ色彩を持ったものが登場します。

また、もう一つの大きな特徴は空間がユークリッド幾何に従っていないという点です。作中の多くの空間は、同一の構造物が連続的に繋がった無限の広さを持つ空間になっています。空中に浮かんでいる構造物の上に立っている時、上下左右を見渡すと自分の立っている構造物と同様のものが一定間隔で点在しているような感じです。一部のパズルは、この無限に繋がっている性質を利用した物もあります。

また、重力を6方向に変化させるシステムも大きな特徴です。本作にはジャンプボタンが無く、代わりに重力方向変更ボタンが用意されています。壁に近づき、重力変更ボタンを押すと、壁の方向が重力方向に変わります。プレイ中に方向が分からなくなり、混乱することが無いように、各方向には対応する色が付けられています。また、多くの個所では明白に上下がある見た目の構造物が配置されています。

本作のパズルは、Portalのように扉に動力を与えることで扉が開き、進んでいくスタイルになっています。パズルの構成要素として最も一般的なものがキューブです。キューブは木に実っていて、紛失しても木に戻れば再獲得できます。キューブには重力方向に対応する色が付いていて、重力方向がキューブの色と同じときだけ落下します。それ以外の重力方向の時は静止するので、足場として使用できます。また、後半になると2つの色を持つキューブが登場します。キューブをはめる穴が扉に繋がっていることが多く、穴に対応する色のキューブを取ってきてはめることで扉に動力を伝えます。

他の主要なパズル要素としては、水源と水車があります。水源から流れる水は、基本的にはまっすぐ流れます。足場の縁に差し掛かると、水の重力に従って滝を形成し、地面に触れるとまたまっすぐ流れるようになります。滝は、プレイヤーの重力方向が滝と違う向きの時は時間が止まり、足場として使用できるようになります。また、キューブを流れを妨げるように置くことで流れる向きを変えることができます。水車は扉を開ける動力源で、キューブを適切に配置し、水車まで水流を到達させると扉が開きます。キューブは木の苗でもあり、キューブを所定の位置に配置し、そこまで水流を到達させるとそこに木が生えてさらに多くのキューブを入手できます。

他にも巨大なテトロミノのギミックや、ボールを移動させるギミック、動力を伝えている間だけ足場が出現するギミックなどありますが、これらを活用しパズルを解いていくのが本作のメインのゲームプレイです。

本作は7つのエリアに分かれていて、各エリアで新規のパズル要素が導入されます。各エリア最後には神の立方体という特殊キューブがあり、封印を解除して神の立方体を入手することでそのエリアの闇が浄化され、次のエリアに進めるようになります。

実は神の立方体を入手しなくても通れる抜け道がエリア間に用意されており、1つも神の立方体を入手しないでゲームクリアをすると特殊エンディングが見れるらしいです。これは、一般的に裏ルートと呼ばれています。

 

良かった点

  • 素晴らしいビジュアル
     
    本作最大の売りであるビジュアル面のクオリティは非常に高いです。無機質で複雑な中に美しさのある巨大な構造物が無限に繋がっている様子は、刺さる人にはかなり刺さると思います。自分もビジュアル面はとても好きで、クリアまでにスクリーンショットを大量に撮ってしまいました。
    一部、パズルの存在しない「魅せる」ために作られたマップもあり、そういった箇所の景観は本当に素晴らしかったです。
     
  • 周回要素
     
    Portal形式の3Dパズルはリプレイ性の低いものが多いですが、本作は裏ルートの追加によって最低でも2周は楽しめるような作りになっているようです(未プレイで申し訳ない…)。
     
  • 雰囲気に合ったサウンドトラック
     
    サウンドトラックはゲームの世界観にピッタリと合ったアンビエントミュージックになっています。特筆して印象に残る曲はありませんが、本作の無機質な世界観を引き立てる役割をしっかりと果たしています。
     

気になった点

  • パズルを解くのにほとんど思考が要求されない
     
    これが最大の問題点だと思っています。本作のパズルは、空間中のどこに何が置いてあるかを確認できてしまえば、後は作業的に解けるものがほとんどで、悩みながら色々試行錯誤するというシーンが、殆どありませんでした
    パズルは小さな部屋の中で解くものと、巨大な空間を舞台にしたもの、2種類に大別することができます。前者はまだパズルっぽさがあるのですが、それでも悩む要素は殆どありません。後者は空間が非常に広大なので、まず何がどこにあるのか把握するまでに非常に時間がかかります。それでいて出来ることはほんの少ししかない場合が多いので、すぐに解けてしまいます。
    結論として、パズルゲームとしてはあまり面白いとは言えない完成度になっています。各パズル要素自体は、面白くできそうなものが揃っているのに、レベルデザインが上手くいっていないイメージでした。
    裏を返せば難しくないという事なので、雰囲気を味わえればパズルはいらない!!という人には良い点となるかもしれません
     
  • 雰囲気が変わらない
     
    本作の辛い点その2です。本作の統一された世界観は美しく、最初はとても良かったのですが、終盤まで全く雰囲気が変わらないため食傷気味になってしまいました。エリアごとにビジュアル面でも大きな変化があれば良かったんですが……
     

総評

良い点と悪い点がはっきりしている作品です。美麗で静謐な雰囲気と無限に繋がったマップの構造、重力方向を変えて進んでいくアイデアはとても良いです。
一方でゲームとして見た場合、単調でパズルの完成度もあまり高くないので、微妙かもしれません。雰囲気ゲーとして割り切って遊ぶのであればオススメの作品です。

 

ゲーム音楽ピックアップ

www.youtube.com
本作のサントラはYoutubeに作曲者が全曲アップしています。特にこれが素晴らしい!!と言ったことはありませんが、ゆっくり聞くアンビエントミュージックのアルバムとしては良いと思います。