ジャンル | 一人称3Dパズルアドベンチャー |
メーカー/ブランド | Stubby Games |
発売年 | 2022 |
ハード | PC(Steam,GOG),PS4,PS5,Xbox Series X/S |
お気に入り度(0~10) | 8 |
プレイ状況 | クリア/Steam版 |
The Entropy Centre
— SPD (@SPD_9X2) 2023年2月25日
物体の時間を巻き戻す”entropy device”を用いてパズルを解いていくPortalライクな3Dパズル+ADV
廃墟×宇宙センターの独特な世界観は圧巻の出来。
パズルは色々ズルができて、それがむしろ楽しかった。
粗削りな面はあれど小規模インディーでここまでやるかと思わせる良作でした pic.twitter.com/hxbrt1XpBX
Steamでゲーム探索をしている時に発見。見た目通り王道な(?)Portalライクゲームでした。プレイ時間は10時間程。
ネタバレは避けて書いていきたいと思います。
The Entropy Centre とは?
イギリスの個人ゲーム制作スタジオ Stubby Games が2022年11月に発売した3D一人称視点パズルアドベンチャーゲームです。Portalを強く意識した作風で、物体の時間を巻き戻す"Entropy Device"を使ってパズルを解いていくのが特徴です。
PC版(Steam,GOG)の他、PS4/5、Xbox Series X/Sでも遊ぶことができます。日本語ローカライズはかなり高品質で、違和感を一切感じずに遊ぶことができます。機種ごとの差は恐らくなさそうなので、好きな機種で遊べばいいと思います。
概要・ゲームシステム
3D空間を1人称視点で歩き回り、パズルを解くことで先に進んでいくゲームです。巨大な施設の奥に進んでいくたびにストーリーが進行し、物語の核心に迫っていきます。舞台となるのは廃墟化した巨大な宇宙基地 "Entropy Centre" で、記憶を失い目覚めた主人公が施設を彷徨う所から物語は始まります。主人公は施設で研究されていた "Entropy Device" という時間を巻き戻す銃型デバイスを手に入れ、デバイスに搭載されていたAIアシスタント "Astra" と共に施設の奥へと進んでいきます。
施設にはたくさんのパズルエリアが用意されており、先に進むためには必然的にパズルを解く必要があります。パズルは、時間を巻き戻す銃 "Entropy Device" を使用して解いていきます。この銃を干渉可能な物体に当てると、時間を巻き戻すことができます。例えば、崩落した橋に銃を当てると橋が元に戻ったり、箱を手に持って運んだあと、銃を当てると元の位置まで戻ったり……
パズルは基本的にテストチェンバー(小部屋)で区切られていて、出口の扉を開けて先に進むのが目標になっています。パズルの要素としては、キューブと感圧版の他、レーザーキューブや物質消去グリッドなど、Portalで見たようなものが多く登場します。ベルトコンベアや扇風機など、時間を巻き戻す要素があるからこそ生きるギミックも複数登場します。
施設の中にはパズルエリア以外に職員のオフィスや、外部者向けの展示館、居住区など様々な場所があり、ストーリー中に訪問することになります。パズルエリア外でも、崩落してしまった足場を巻き戻したりなど、多少のパズル要素があります。また、中盤以降は戦闘要素もあります。
ストーリーは "Astra" と主人公の掛け合いと、施設のアナウンスがメインで進行していきます。"Astra"との会話にはジョークが多分に含まれていて、荒廃した世界感と緊迫した状況を和らげる中和剤のような役割を果たしています。施設内にはPCが起動したまま放置されていることがあり、かつて施設にいた人々が遺したメールを見ることができます。これは収集要素にもなっていて、見付けた数が記録されます。
良かった点
- 宇宙ステーション×廃墟の独特な世界観と表現
舞台となる "Entropy Centre" は廃墟化した月面基地な訳ですが、その表現が非常によくできています。Portal2のAperture Scienceにも驚きましたが、それに劣らないくらいの魅力的な世界を表現できていると思います。
特に、屋外エリアは宇宙ステーションとリゾート地、廃墟の3つの要素が上手く融合していて、今まで見たことのない雰囲気で素晴らしかったですね~ 屋外テストチェンバーでは水流がギミックになっていてのも良かったです。
また、グラフィックは流石Unreal Engineと言うべきか、非常に綺麗です。
- 素晴らしい演出の数々
本作はパズルを解くフェーズと、施設内を探索しつつ進んでいくフェーズに大別できますが、後者には多数のイベントが用意されています。イベントには3D一人称視点をフルに活用した演出が多数用意されていて、展開を劇的に、ワクワクするものにしています。
何度か遭遇する、施設の崩落から逃れるイベントではデバイスを活用して崩落を巻き戻しつつ進んでいく、本作独自の要素が生かされた演出になっています。
- 適度なパズル要素
パズルの難易度自体は低めに抑えられていて、終盤こそ少し難しいもののあまり詰まりすぎることなくテンポよく進んでいけました。人によっては歯ごたえが無いと感じるかもしれませんが、簡単すぎず難しすぎない絶妙なラインを攻めていると感じました。
ただし、Entropy Deviceの性質上、最後の状態を作っておき、そこから逆算して物体を動かし、最後にデバイスを使って巻き戻しつつ出口まで到達するパターンが非常に多いです。そのため、アクションが苦手な人だと最後のデバイス使用をするフェーズでミスをして何度も前準備をやり直すことになり、ストレスになるかもしれません。
- パズルの詰めの甘さ
一般的にはいい点とは言い難いのですが、本作のパズルは詰めが甘く、想定解以外にも様々なズルができるようになっています。乗れる箱をギリギリの位置に設置すると本来乗れない場所に乗れたり、物体の出っ張りを利用して無理やり壁を乗り越えたり…… 中には正攻法だと思っていたら、明らかに使っていない要素が残っており、今のはズルだったのか…と気が付くことも。
そんなズルをする余地が残されていて、答えが1つではないからこそ、色々できないか考える試行錯誤が楽しかったです。
もしアップデートでレベルデザインに手を加えるにしても、今できるズルはそのままにしておいて欲しいですね。ズルをした時にAstraが指摘してくれるなどの要素が入っていれば素晴らしかったと思います。
気になった点
- 細かい挙動の詰めの甘さ
上記のズルができるようになっている原因でもあるのですが、本作は不可解で理不尽な挙動が起こりがちです。特に多発するのは、崩落している足場を修復して上昇するシーンです。崩落している足場の破片の内、大きなものに乗り、足元に銃を照射することで修繕と同時に上に上がるのですが、この時小さな破片に衝突して死ぬことが多発します。修復中の死亡事故は避けるのが難しく、どこならば死なないのかが非常に分かり辛いです。
また、部屋の隅の方に行ったら嵌って動けなくなる現象にもよく遭遇しました。他には、飛ばしたキューブが突然消失するのもよく遭遇しましたね。こんな感じでいろいろ挙動が不安定ですが、そのせいで長時間詰まるような事は無かったので、広い心を持っていれば気になるほどではないです。
- ストーリー要素の詰めの甘さ
本作のストーリーはSFであり、色々独自の設定が登場するのですが、その詰めが甘いです。真剣に考察をしようとすればするほど、細部の粗さが目につきます。本作ラストは、ここからもう1章ぐらいあるのかな?と思ったらエンディングになってしまい、驚きました。真剣にストーリーを楽しむというよりは、雰囲気を楽しむくらいの気持ちで遊んだ方がいいかもしれません。
- 収集要素
収集要素として、起動しているPCを探し、そこから情報を集めていく要素があります。情報の内容自体に文句はないのですが、全て収集しようとすると苦行です。なぜなら、PCを見つけたときにいくつ集めたかを教えてくれるだけで、集めた情報を見返したり、どこの情報を既に回収しているのかなどが分かる機能がないからです。1周目で集めきるのはほぼ不可能で、2周目だとしても取り逃しに気が付けないので、攻略などを見てやらないと厳しいと思います。
もう少し快適に収集できる環境が整っていればよかったのですが……
総評
粗さは目立ちますが、Portalフォロワーとしてはオリジナリティもあり、ボリュームもクオリティもほぼ個人制作とは思えない、充分な完成度を誇っている作品だと思います。
特に独特の世界観と派手で印象的な演出の数々は素晴らしいの一言。Portalを気に入っていて、なおかつ広い心を持っている方にはお勧めできる作品です。
ゲーム音楽ピックアップ
特に印象に残る曲は無かったと思います。アンビエント系なので仕方ないですが…