ジャンル | 漂流サバイバルクラフト |
メーカー/ブランド | 開発:Redbeet Interactive, 販売:Axolot Games |
発売年 | 2022(本リリース) |
ハード | Steam |
お気に入り度(0~10) | 8 |
プレイ状況 | エンディング到達/Steam版(FinalChapterアップデート後) |
RAFT
— SPD (@SPD_9X2) 2023年1月12日
イカダで漂流するサバイバルゲーム
海に漂っているゴミをサメと格闘しつつ集め、水や畑などのインフラ整備やイカダの拡張、無人島の探索等を行う
ラジオ塔などの特殊な島を巡ることで物語が進行、新アイテムが解禁され更に便利に
粗さはあるものの移動し発展する拠点の面白さを味わえる良作です pic.twitter.com/mM4bNjcxLB
良い感じのマルチCOOPゲーを探していてたどり着いた本作。良くも悪くもプレイ前と後で大きく印象が変わった作品でした。いいところと悪いところがはっきりしている作品でもありますね。ネタバレは避けて書いていきたいと思います。
Raft とは?
youtu.be
Redbeet Interactiveが開発、Axolot Gamesが販売している漂流サバイバルクラフトゲームです。本リリースは2022年6月21日ですが、Steamで2018年5月23日から早期アクセスを行っていました。
対応プラットフォームは現在(2023/02/25) Steamのみで、Win,Mac,Linuxに対応しています。マルチプレイヤ-に対応していて、自分のワールドを公開し、複数人でプレイすることができます。
概要・ゲームシステム
基本的のゲームシステムは、Minecraft,Terrariaのようなサバイバルサンドボックス系ゲームを踏襲しています。本作の最大の特徴は、クラフトをして作り上げている拠点が「イカダ」である点です。イカダは様々な建材や装飾用具を用いて自由な形に建築を行うことができます。一方で、イカダ以外に建築要素は一切ありません。イカダであてもなく海上を漂い、漂流物を回収して資材を集め、イカダをどんどん巨大に・快適にしていくのが本作の一番の柱となる楽しみです。
もう一つの柱として、本作には探索・ストーリー要素があります。果ての無いように見える海には、たくさんの島が点在しています。木が1,2本生えているだけの小さな島もあれば、動物が暮らしている大きな島もあります。島には漂流物からは手に入らないアイテムもあり、島の気候ごとに手に入るアイテムも異なるので様々な島を巡ることになります。普通の島以外に、ストーリーの根幹にかかわる特殊な島が複数存在しており、順に巡り、イベントをクリアすることでストーリーが進行します。イベントは島ごとに様々ありますが、基本的にはアイテム探しの場合が多いです。ストーリーを進行させると、イカダをより便利にすることができるアイテムが作成可能になったり、新キャラクターが解禁されたりします。
良い点
- 広大な海を心許ないイカダで漂流する唯一無二の体験
本作の一番素晴らしい点はこれです。「海面」という中々ゲームの舞台にならない場所の魅力をしっかりと引き出し、他の作品では味わえない独特のプレイ体験を生み出しています。
本作において海はただ周囲に広がる空虚な空間ではありません。海上にはたくさんの漂流物が浮かんでいて、プレイヤーは常に海面を観察して良いもの(タル等)が流れてこないかをチェックしている必要があります。また、島や漂流している他のイカダが見つかることもあるので、遠景にまで気を配る必要があります。島の影を遥か彼方に発見し、いざ向かおうとしたとき、次に風向きが問題になります。イカダは基本的に風向きの方向に流されるので、うまく帆の角度を調整したり、時にはオールで風向きに逆らって漕がなくてはいけません。やっとの思いで島に到着してもすぐに上陸というわけにはいきません。イカダは固定していないと流されて行ってしまうので、碇を下すか、島の風上側に停泊する必要があります。
陸上にいると考えることすらない、海だからこそ考慮しなくてはいけないの要素の数々、これを味わうことができるのが本作最大の魅力だと思います。
私は友人とプレイしましたが、「七時の方向に島発見!!」なんて台詞、一生のうちに口にする機会があるなんて思いもしませんでしたよ……
- 海の表現
海の表現はしっかりと作り込まれていて、素人目には良好な海面の表現ができていると思います。また、晴れ渡った日の海と、月の光しかない夜の海、曇天の日の荒れた海など状況によってさまざまな表情を見せてくれるので、風景が変わらない単調さを感じることもありません。
- 拠点拡張の楽しさ
サバイバルクラフト系のゲームでは、拠点の建築・拡張は一般的な要素ですが、本作は特に拠点の拡張が楽しい作品に仕上がっていると思います。
まず、本作は生き残るために必要な水・食料が割と手に入れるのに苦労するバランスになっています。生存を楽にするためには、より良い水精製器を手に入れたり、効率のいい調理器具や生産手段をイカダの上に用意する必要があります。何をするにも場所を取るので、そもそも足場を充分に拡張する必要があります。そのため、ただ楽に生き残るために必要なことをしているだけでイカダはどんどん大きくなっていきます。
また、設備の配置をしっかり考える必要があるのも面白いポイントです。例えば、水精製器は自分で海から水を汲んできて補充しなくてはいけないので、海の近くに置く方がよいです。また、畑は時々野鳥が作物を盗みに来るので、いつでも追い払えるようにイカダの中心部に置きたいです。また、チェストに入るアイテムの個数が少なめなので、肥大化する倉庫の配置や管理も重要です。また、ストーリーを進めるとイカダをさらに便利にする設備が作れるようになり、その度に新設備をどう配置しようか……と考えることになります。全体として、設備をどう配置するかによって生活の快適さが大きく変わってくるので、導線を考えてより生活しやすい拠点を作っていくのが本作の楽しみの1つになっています。
本作は拠点であるイカダ自体が移動するので拠点滞在時間が単純に長いこともあり、拠点が便利になった時の恩恵を感じやすい作りになっているので、Minecraftで綺麗な建築を作ることよりもいろいろな設備を作ることに喜びを感じるタイプの人にはかなりオススメできる作品に仕上がっていると思います。もちろん、装飾アイテムもたくさん用意されているので、綺麗な建築を作るという面でも楽しめる作品です。
- 素材アイテムの収集と利用のバランスの良さ
サバイバルクラフト系の作品なので、アイテムの収集・利用(クラフト)が一つの重要な要素となっています。本作は、素材系アイテムの数が絞られていて、無駄になるアイテムがほとんど無いのが素晴らしい点です。どんな素材でもとりあえず手に入れておけば役に立つので、島の探索や漂流物集めがかなり有意義な時間となります。また、入手量と消費量のバランスもとれていて、余り過ぎるアイテムや、逆に不足しすぎるアイテムなどが無いのも良いです。
- ゲームの指針となるには十分なストーリー要素
本作のストーリーは特殊な島(ラジオ塔や座礁した船など)を順に巡ることで進行していきます。島には敵対生物が居ることがあり、戦闘の準備もする必要があります。島の探索は、島にある特殊アイテムを探して新たなエリアを解放し、更にその先のエリアでアイテム探しをする繰り返しのパターンが多いです。一部謎解きや、ボスとの戦闘要素もあります。島にはメモが落ちていて、拾ったメモは手帳に記録されていきます。一つ一つは大したことのない内容ですが、集めることで徐々にストーリーの全容が明らかになっていきます。最終的に、次の島の位置を示すメモを発見すると攻略は一応終わりです。
島には「ブループリント」というレシピが落ちていて、これを拾うとイカダ生活をより快適にする設備やアイテムが作成可能になります。また、島固有の装飾アイテム等も入手できるので、建築にこだわりたい場合は隅々まで探索すると幸せになれます。実用的なアイテムもたくさん落ちているので、純粋にアイテム補給としてストーリーを進めるのもありです。
全体として、ストーリー要素はゲームに目的を持たせ、進める指針となるには十分な完成度とボリュームを誇っています。島のビジュアルもよく出来ていて、漂流中に遠目に見えて来たときのワクワク感はかなりのものです。ただし、ストーリーや島探索要素単体で見た場合、完成度自体はお世辞にも高いとは言えません。詳しくは後述します。
気になった点
- ストーリー要素単体で見ると微妙
ストーリー要素(特殊な島への訪問)をイカダ漂流の合間のイベントとして見れば悪くないのですが、この要素だけで見ると微妙です。まず、島探索は殆どがアイテム探しの時間で、盛り上がりに欠ける印象があります。基本的にノーヒントなので、詰まってしまったときに長時間無意味な探索を続けることになるのも辛いです。また、探索中も水や食料は必要なので、探索に詰まると食糧不足も問題になります。
シナリオの筋書きはサスペンス+SF風味を感じるものになっていますが、最終的にはシンプルな勧善懲悪モノに収まってしまいます。また、基本的に物語は残されたメモから推測できるだけなので、ゲーム中に大きなイベントが起こり、そこから大きく物語が動くこともありません。世界の謎的なものも解明されないので、シナリオに期待するのは良くなさそうです。
- 一部敵対生物
本作の象徴ともいえるサメですが、割と鬱陶しいです。常にイカダの周囲を徘徊していて、海に飛び込むとすぐに噛みつきに来ます。時々イカダの縁を噛んで壊していくのも、少なくとも楽しい要素ではないです。壊されたマスの上にあった設備は消失してしまうので、常に気を配る必要があります。ただ、サメが噛みに来るのを考慮に入れてイカダ上の導線設計をしたり、サメを殺した直後は自由に海に潜ってアイテムを拾いまくれるので一種のフィーバータイム的要素になっていたり…… 別の楽しみを生み出す要素にはなっています。
他にも敵対生物は多数存在しますが、スクリーチャー(大きな鳥)は嫌な敵です。頭の上から大岩を落として来るのですが、これが避け辛く、飛んでいるので倒すのもかなり大変です。この鳥が住んでいる島の近くでは、イカダの上にまで襲撃をしてくるのでイカダの上で少し放置していたら殺されていたなんてことも……
総評
拠点(イカダ)の発展を楽しむサバイバルクラフトゲームとしては非常によくできています。漂流の雰囲気と、海上だからこその要素の数々の体験は新鮮さに溢れていて、最後まで遊ばないとしても本作を体験する価値は十分にあります。
一方でストーリー要素はあくまで漂流を少し刺激的にする要素程度に考えておいた方がよいです。ゆったりと漂流しつつ、気が無たときに次の目的地に向かってみるくらいのゆるい遊び方が一番楽しめるのではないでしょうか。
全体として、漂流してみたい人、設備を作り快適にしていくタイプのゲームが好きな人にはお勧めの作品です。また、マルチプレイでより楽しくタイプの作品なので、数人でゆっくり遊びたいゲームを探している人にはお勧めです。
ゲーム音楽ピックアップ
- Salt
Raftといえばこの曲みたいなイメージの曲です。何度も聞いて記憶の隅に深く刻み込まれているような曲が本作には多いですね。これはMinecraftに通じるところがあると思います。