【ゲームレビュー57】ポケットモンスター スカーレット

レビュー一覧

ジャンル JRPG
メーカー/ブランド 開発: ゲームフリーク / 販売: 任天堂
発売年 2022
ハード Switch
お気に入り度(0~10) 8
プレイ状況 エンディング到達 / Switch版

 

 

エンディングまでプレイした時点での感想となるので、対戦要素・やり込み要素・DLCへの言及はありません。ご留意ください。ネタバレは避けて書いていきます。
 

ポケットモンスター スカーレット とは?

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store-jp.nintendo.com

www.youtube.com 

説明不要なポケットモンスターシリーズの第9世代作品です。いつも通りゲームフリーク開発、任天堂発売です。対応ハードはSwitchでパッケージ版・DL版が販売されています。
DLC「ゼロの秘宝」が2023年秋以降に配信予定です。

 

概要・ゲームシステム

ポケモンシリーズ本編なので、基本的には他シリーズ作品と同様、「ポケモン」と人間が暮らす現代風の世界を舞台にしたRPGになっています。主人公は3匹のポケモンの内から1匹を選び、学校の課外授業の一環として、広大に広がる「パルデア地方」を巡る旅に出ます。

本作の御三家(最初のポケモン)

 

シリーズ内における本作の最大の特徴は、オープンワールドになったことでしょう。前作「ソード・シールド」で登場したワイルドエリアを大きく拡張したような世界が舞台となっており、基本的にマップの切り替えがなく、高い自由度を持って世界を探索できるようになっています。

オープンに広がる世界が舞台

 

野生のポケモンとの戦闘は、前作同様シンボルエンカウントになっています。剣盾では多くあった、プレイヤーに積極的に向かってくるポケモンは本作ではほぼ居なくなっています。また、本作では一般トレーナーとの戦闘も、こちら側から話しかけることで初めて発生するようになっています。以上の変更によって、戦闘はプレイヤーが意識して起こさない限り起きないようになっています。(衝突事故を起こすことはありますが…)

また、マップ上にはランダムでアイテムが落ちていて、戦闘に役に立つアイテムやきのみ等を拾うことができます。アイテムは復活します。また、黄色のモンスターボールを拾うと技マシンが手に入ります。

本作には、シンボルエンカウントを活用した連れ歩き戦闘システムが導入されました。このシステムは、連れ歩いているポケモンに指示を出して周囲の野生のポケモンをとしてもらうシステムです。従来の戦闘画面に入らずに敵を倒せるので、いい経験値稼ぎになります。

 
XY以降の作品では伝統になりつつありますが、本作にも独自の戦闘システムが搭載されています。本作のシステムは「ラスタル」で、ポケモンのタイプを変えることができるシステムです。各個体にはどのタイプに変化するかの属性「テラスタイプ」が付いていて、それに合わせてタイプを変化させることができます。元と同じタイプにテラスタルすると、火力が強化されるようになっています。本作のボス級のキャラクターもテラスタルを切り札ポケモンに使用してきます。

ラスタル対面

本作のパッケージを飾っている伝説のポケモン「コライドン」(バイオレットではミライドン) は、再序盤から主人公の仲間として登場します。シナリオに深く絡んでくるほか、主人公の乗り物(ライドポケモン)として活躍します。

乗り物として大活躍する

本作の主人公は学生なので、学校で授業を受けることも出来ます。学校ではイベントも起こるので、旅の合間に学校に戻ってみるといいかもしれません。

授業の後にはテストが待ち構えている

 
本作のメインのストーリーラインは、以下の3つのシナリオを同時並行的に進めていくものになっています。各シナリオにおいてイベントが起きる場所がマップ上に表示されていて、それを好きな順番で巡ることでシナリオが進んでいきます。
 

  1. チャンピオンロード

    8つのジムを巡り、バッジを集めてポケモンリーグに挑戦するシリーズ伝統のシナリオです。各ジムでは、まず「ジムテスト」を受け、合格後にジムリーダーに挑戦します。ジムリーダー戦においては、最後の一匹になると「テラスタル」を使用してきます。

    各ジム固有のテストが用意されています

    ジムリーダーは最後にテラスタルを使ってくる

     

  2.  レジェンドルート

    先輩である「ペパー」と共に各地を巡り、強力で巨大なヌシポケモンに挑んでいくルートです。
    ヌシを倒すと秘伝のスパイスが手に入り、コライドンが新たな能力を獲得します。具体的には、水上を移動できるようになったり、空を飛べるようになったり…
    このルートを進めることで行動範囲が増えていきます。

    巨大なヌシポケモンとの戦闘


  3.  スターダストストリート

    シリーズ伝統の悪の組織と戦うシナリオです。本作の敵は主人公の通うアカデミーの不良集団「スター団」です。各地にあるアジトにいるリーダーと戦い、アジトを解放していくのが目的となります。
    各アジトでは、まず「団ラッシュ」というミニゲームを行います。これは、連れ歩き戦闘システムを活用したミニゲームです。プレイヤーは3匹まで手持ちを選んで、スター団のしたっぱのポケモンを蹴散らしていきます。
    規定の数のポケモンを倒すと、アジトのボスが登場します。このボスは切り札として巨大なブロロロームを繰り出してきます。硬いうえに攻撃力も高く、強敵です。

    団ラッシュの様子

    巨大で強力なボスの切り札

これら3つのシナリオを全てクリアすると、最終シナリオが始まります。最終シナリオでは、パルデア地方の中心に空いた巨大な穴「パルデアの大穴」の謎に迫っていきます。3つのルートの集大成的な内容になっています。

 

良かった点

  • 抜群の演出力で魅せる熱いシーンの数々
     
    本作の最も素晴らしい点は演出だと思っています。
    特に、戦闘関連の演出は飛びぬけて素晴らしいです。各イベントで戦うボス級のポケモン・トレーナーとの戦闘は、カメラのアングル、台詞回し、キャラクターの仕草、戦闘中に挟まれる小イベント、会話からシームレスに戦闘に移行する点なども含めて全力で練り込まれており、特別なバトルに対するワクワク感を掻き立ててくれます。
    特に、剣盾同様本作にも導入されたジムリーダー戦の音楽を活用した演出には目を見張るものがあります。戦闘前の手拍子の音で緊張感を演出し、比較的地味な戦闘曲で繋いだ後、切り札ポケモンをテラスタルする格好良い演出に合わせて爆発的に音楽が盛り上がります。この時の曲は、応援歌のようなコーラス主体のものになっていて、ジムリーダーとの戦闘を観客たちが応援してくれているという演出になっています。クリアまでにこの演出を8回は見ることになるのですが、飽きるどころか最後のジムでは「もうこの演出見られないんだな…」と残念になるほど素晴らしかったです。
     
    また、作中終盤・最終章のイベントには特に力が入っていて、ひっきりなしにやってくる熱い展開の数々にテンションが上がりっぱなしでした。
     
  • ポケモン収集の楽しさ
     
    本作には殿堂入り前の時点で300種類を優に超える非常に多くの種類のポケモンが登場します。場所によって見かけるポケモンの種類が大きく変化し、稀にしか会出現しないレアなポケモンも用意されています。
    オープンワールド化の影響で高レベルなポケモンが捕まることが増え、捕まえた直後に戦力になることもしばしば。そのため、とにかく捕獲しまくってパーティーをどう組み替えるのか考えるのが楽しいです。
     
  • 個性豊かで温かく、愛着の湧く素敵なキャラクター達
     
    素晴らしいキャラクターたちも本作の魅力の1つでしょう。特にライバルキャラ達は、それぞれが物語を背負い、それを主人公と共に乗り越えていく過程が描かれ、つい感情移入してしまいます。
    学校の先生たちやジムリーダーなど登場する大人キャラクター達は、割と奇抜なキャラ付けが多いですが、みんな芯はしっかりとしていて、真摯に生徒たちと向かい合いつつも、優しさが行動の節々から溢れ出しています。こんな大人になりたいなぁと思わせる素敵なキャラクターたちが織り成す温かみのある世界観が本作の大きな魅力です。
     

気になった点

  • 密度の低いマップ・サブイベントの不在
     
    本作から導入されたオープンワールドですが、正直オープンワールドである事による面白さは感じられませんでした。その理由は、マップの密度が低すぎて探索のし甲斐が無いからです。
    広大に広がるマップ上を探索して見つかるものは、基本的に野生ポケモンとアイテム、そしてMOBトレーナー以外はほぼありません。サブイベントや、サブクエストの類は全く存在せず、ただマップを走り回ってポケモンを捕まえ、トレーナーを倒す以外にすることがありません。また、視覚的に特徴のある場所も少なめです。
    更に、洞窟・雪山等のダンジョンも固有のギミックなどが配置された場所はなく、ただ広い空間が広がっているだけです。
    また、街にある建物には一部を除いて基本的に入ることはできません。そのため、基本的に街のNPCは外にいます。しかし、彼らに話しかけても大した情報をくれることはなく、サブイベントも起こりません。それどころかアイテムをくれることもありません。そのため、ジム攻略後の街はただポケモンセンターと店があるだけの場所になってしまいます。
     
    本作はメインイベントには力が入っていますが、それ以外の細かな遊びの要素はほぼ存在しないものと覚悟して始めた方が良いです。
     
  • 「パルデア地方」を冒険している感じがしない
     
    シリーズを複数プレイしている方には同意してくれる方も居ると思いますが、私は「カントー地方」と「パルデア地方」を並べたとき、どうしても前者の方がリアリティがある世界のように感じてしまいます。
    これは本作にサブイベントが一切存在しないことが原因だと思います。RPGにおいて、サブイベントは作中世界の「常識」と接する機会であると私は考えています。例えば赤緑で有名なシオンタウンのイベントは「ポケモンもいつか死に、ちゃんとお墓を作って弔っている」「死んだポケモンが幽霊となって出ることがある」等々、作中世界の設定や常識と触れ合う機会になっています。様々なサブイベントをこなしていくうちにプレイヤーの脳内に「カントー地方の世界観」が少しずつ構築されていき、GBの表現力でもポケモンの世界を冒険している満足感を得ることができるのです。

    一方で本作にはサブイベントがほぼ無いので、作中世界の世界観がよくわからないまま進行していきます。いつまでたっても世界を見る目が変わらず、ただの広い空間の中を行ったり来たりしている感覚が拭えません。
    まぁ終盤に畳みかけるようにやってくる充実したメインイベントのお陰である程度は払拭できてはいますが……
     
  • 団ラッシュ
     
    スター団のアジトで遊ぶミニゲーム「団ラッシュ」ですが、制限時間がやたら長いので、適当にポケモンを召喚していれば確実にクリアできます。タイプ相性を考えてポケモンを召喚すると効率よく倒せるようですが、そもそも1つのアジトには1つのタイプが割り当てられているので、そのタイプに有利なポケモンを連れていけば楽勝です。
    そのため、楽しさが一切分かりませんでした。そもそもゲーム性が存在するのかすら分かりませんでした。
     
  • 実質的に攻略順序が固定されている
     
    好きな順番でメインイベントを進めることができるのは本作の大きなウリとなっています。しかし、実際はプレイヤーの進行状況に依らず敵のポケモンのレベルが一定なので、簡単なものから攻略する以外に選択肢はありません。
    勿論レベルを上げて難しいイベントを先にこなしてもいいのですが、残された簡単なイベントが簡単になりすぎてしまい張り合いが無くなってしまいます。
    何番目に挑戦するかで敵のレベルが変化するシステムが搭載されていれば良かったのに……
     
  • 着せ替え要素の実質的消失
     
    XY以降の作品で導入されていた主人公の着せ替え要素ですが、本作は服は制服4種類からしか選べません。一応靴や手袋などは変えることができますが……
     

総評

好きか? と問われればYESなのですが、傑作か? と問われると困ってしまう。そんな作品です。メインイベントの演出やストーリーライン、キャラクターの描写などは突出して素晴らしい一方で、RPGの楽しさの大きなウェイトを占める細かなイベントやクエストが一切存在せず、マップの密度が低く世界を冒険する楽しさが無いのが非常に残念です。

開発側もテンポよく新作を出す必要があり、苦しいのでしょうけど……
 

ゲーム音楽ピックアップ

  1. 戦闘!ジムリーダー
     文句なしの最高の曲です。これを聴くためだけにプレイするのもありですよ
     
  2. 決戦!ネモ
     演出も併せて輝く、明るく集大成感のある戦闘曲です。
     
  3. 戦闘!ペパー
     2回目に聞くときに大きく印象の変わる曲。ペパー自身もね
     
  4. 戦闘!スター団ボス
     中盤に挟まれる泣きメロが素敵
     
  5. 戦闘!ボタン
     かなり攻めた曲調でびっくりしました。ポケモンでHardStyleを聴くとは…

  6. エリアゼロ
     人知を超えた領域の神聖さ、荘厳さを最大限表現しています
     
  7. 戦闘!ゼロラボ
     最終戦の曲。Toby Foxが作曲していると知って驚きました
     
  8. Celestial

    www.youtube.comエンディング曲。明るく少し切ない感じが好きです。